「三洋とハイアールの融合はこれからだ」 日本・東南アジア担当のトップに聞く

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今後の戦略を語るハイアールアジアインターナショナルの伊藤嘉明社長(撮影:尾形文繁)
ハイアールアジアインターナショナル(以下、HAI)は6月5日、デザイン家電を手掛けるアマダナ(旧リアル・フリート)と業務提携すると発表した。
ハイアールは白モノ家電世界最大手だが、売上高の大半を中国市場が占めており、海外展開が大きな課題だ。2012年には三洋電機の白モノ家電部門を買収し、「ハイアール」や「アクア」ブランドを展開。HAIは旧三洋を母体とし、ハイアールの東南アジア、日本エリアを管轄する重責を担っている。
ただ、日本での販売は苦戦している。「アクア」ブランドの2012年度の売上高は348億円だったが、前2013年度は数%落ち込んだもよう。挽回に向けて、社長にスカウトされたのが伊藤嘉明氏だ。その伊藤氏が選んだパートナーが、アマダナ。アマダナは、東芝出身の熊本浩志社長が2002年に設立。デザイン性の高さに定評があり、自社で製品を企画・販売するだけでなく、NECの携帯電話など大企業とのコラボレーションした実績もある。
伊藤社長のキャリアも異色だ。米国の大学を卒業後、日本コカ・コーラやデル、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントなどを渡り歩き、今年2月、44歳でHAIのトップにスカウトされた。
今後、ハイアールはどんな戦略に打って出るのか。伊藤社長に聞いた。

ものづくりの工程を変える

――なぜアマダナと業務提携したのか。

アマダナは好きなブランドの一つだった。製品のデザインだけでなく、これまでも(家電量販店だけなく)原宿に自社の販売店舗を構えるなど、売り方の差異化を図っている。商品のストーリーをどう消費者に訴えるか。その点でアマダナの取り組みは興味深かった。

今、家電市場には多くのナショナルブランドの製品がひしめき、課題は差別化だ。そこで重要なのは、ユーザーに新たな体験を提供すること。その方法を考えているときにアマダナの熊本社長と出会い、波長が合った。

重要なのは商品そのものより、モノを作る過程を変えることだ。そこでカギとなるのが、「オープン・プラットフォーム」と「コ・クリエーション」の2つ。オープン・プラットフォームとは、商品開発の過程を、インターネットを介してオープンにしていくこと。すでにアマダナは「アミダス」というプラットフォームを所有している。そのプラットフォームを活用し、開発過程でつねにユーザーとコミュニケーションをとって、ユーザーに受け入れられるかの確認作業をしていく。これがいわば、コ・クリエーション(共創)だ。モノを出した後にも改良は続ける。商品に完成形はないと思う。

既存の商品開発では、ユーザーの欲しいモノとメーカーの開発現場との間で、どうしても認識のギャップがあった。だがオープン・プラットフォーム上では、その距離はゼロになる。重要なのはスピードだ。通常なら新商品の企画から発売まで1年半はかかるが、年内には製品を発表したい。

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