高速バスの"革命児"が挑む、赤字鉄道の再生 ウィラーは北近畿タンゴ鉄道をどう変える?

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JRと丹後エリアを結ぶKTR8000系

1台当たりのバスの定員はせいぜい40人にすぎず、これでは列車を満員にするのは無理だ。KTRは西舞鶴経由でJRとつながっているため、観光対策としては、むしろ京都を訪れた観光客を鉄路で呼び込む施策を打つほうが効果は大きいという。

こうして見ると、村瀬社長のやろうとしていることは、極めて“地道”だ。派手なイベント列車やグッズ販売で赤字ローカル会社を再生するといった小説があるが、現実はそれほど甘くはないのだ。「距離の短い路線なら、イベントによる集客の効果も大きいだろうが、KTRの路線距離は114キロメートルもある。とにかく地元の人に乗ってもらう仕組みを作らないと」(村瀬社長)。

膨らむ「IT列車」の夢

ウィラーはKTRにIT列車の夢を見る(写真:尾形文繁)

そう言いつつも、実はウィラーの提案の中には革新的なアイデアも含まれている。それは、ITを活用して駅の魅力を高めるというものだ。

ウィラーには、バス予約システムを自前で構築してきた実績がある。「ITはそのイメージとは裏腹に、人と人を結びつける力が強いし、自然にも優しい。ITで鉄道と乗客をつなげていきたい」と、村瀬社長は意気込む。

まず、ITを駆使して駅を住民同士のコミュニケーションの場として活用していく。さらに、何年か先には「最先端のIT列車」を作りたいという。それ以上の具体的な内容は明かされなかったが、村瀬社長の中にはある程度のイメージができているはずだ。

高速バス業界は鉄道業界を上回るスピードで進化している。このスピード感を鉄道に持ち込めば、数年後のKTRは現在とはまったく違う姿に変貌しているかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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