日系も次々参入「途上国の農業支援」に見た課題 一方で社会課題に挑む企業への関心は高まる

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さらに2021年にはガーナで4000エーカーほどの自社農地を取得し、トウモロコシの生産を始める。「日本のJA(農業協同組合)のようなさまざまな事業をアフリカで展開したい」と牧浦CEOは力を込める。

インターネットを活用して先進国の個人マネーを途上国の農業支援に結び付ける仕組みも登場している。グアテマラに住む19歳の少年が利用するのは奇兵隊(東京都港区)が運営する寄付型クラウドファンディングサービス「Airfunding」。少年は4人の兄弟と畑で働いているが、十分な収入を得るのが難しい。同サービスで1500ドルの調達をめざしており、「産卵鶏の農場を持つのが夢」だという。

農業は収益化までに時間がかかる

また、クラウドクレジット(東京都中央区)は途上国の中小企業や個人への貸付金に投資できるファンドを運営する。例えばペルー向けのファンドでは貸付先の50%が農業・畜産関連で、平均の貸付金額は約16万円。農業者は調達資金でコメ、じゃがいもの苗や種、牛や搾乳機などを購入し、事業拡大に役立てている。

国連が定める持続可能な開発目標「SDGs」が産業界に浸透し、途上国の貧困問題など社会課題の解決に挑むスタートアップへの投資家の関心は高まっている。ただITやゲームなどと違い、農業は収益化までに時間がかかる。スタートアップは現地に根差した息の長い取り組みが求められそうだ。

馬渕 次郎 スタートアップライター

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まぶち じろう / Jiro Mabuchi

一橋大学を卒業後、上場メーカーで経理業務を経験。大手メディア企業に入社し、幅広い産業や資本市場の取材、媒体の編集業務に携わる。現在は公認会計士として企業の財務諸表監査を軸に、スタートアップ関連の情報発信や執筆活動にも従事している。

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