「えんとつ町のプペル」疑った私が裏切られた訳 あのブームに覚える違和感と映画の完成度

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映画は、西野さんご本人も「これは、今までのチャレンジとは規模が違う」と言うほどの、ビッグビジネスです。

先ほど「興行収入100億円だとしても赤字」という西野さんの発言を紹介しましたが、2019年に興行収入が100億円を超えた映画は、『天気の子』『アナと雪の女王2』など4本だけ、2020年は現在のところ『鬼滅の刃』のみです。

そうしたビッグビジネスにおいて、ファンコミュニティは、どの程度の存在感を発揮するのか。これは、映画の内容とは別に、とても興味を引かれるところです。そして「プペル」が興行的に成功をおさめるかどうかは、今後の日本映画の作り方や売り方にも大きな影響を与えると感じます。

先入観があった人も、まずは劇場へ

映画の中では、既存の権力に対抗するプペルやルビッチの挑戦が描かれています。

最初は笑われ、次に恐れられて迫害される。そうした主人公たちの姿は、私には、お笑い界を飛び出し次々と新しいチャレンジをする西野さんに重なって見えました。

折しも、日本で一番早い上映会に現れた西野さんは、

「挑戦する人を笑う、夢を語れば叩かれる、この世界を終わらせにきた」

と発言し、会場の喝采をあびました。

この西野さんの発言を

「既存のシステムを一緒にぶっ壊していこう、と言ってもらった」

ととるか、

「既存のシステムに乗るつまらない人間は消えろ、と言われた」
と、とるか。

ちなみに、私は比較的、後者の気分で映画を観始めました。

けれども、冒頭申し上げたとおり、そんな先入観があったにもかかわらず、「食わず嫌いしなくてよかった」と、心から思った映画でありました。

私と同じような理由で、なんとなく『えんとつ町のプペル』を敬遠していた人へ。「ひとまず観てみませんか? なかなかよかったんですよー」とお伝えしたくて、書いた次第です。

現場からは、以上です。

佐藤 友美 ライター・コラムニスト

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さとう ゆみ / Yumi Sato

1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経て文筆業に転向。元東京富士大学客員准教授。

書籍ライターとして、ビジネス書、実用書、教育書等のライティングを担当する一方、独自の切り口で、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆している。

著書に8万部を突破した『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、『道を継ぐ』(アタシ社)など。理想の男性は冴羽獠。理想の母親はムーミンのママ。

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