5年前にも交渉。ソニー、シャープ 液晶提携の舞台裏

5年前にも交渉。ソニー、シャープ 液晶提携の舞台裏

テレビ用大型液晶パネルの共同生産に乗り出すソニーとシャープ。しかし実は、両社の接近は今回が初めてではなく、5年前にも秘密交渉が行われていた。決断の背景とは。
(週刊東洋経済3月8日号より)


 ソニーとシャープが、テレビ用大型液晶パネルを共同生産することで基本合意した。シャープが大阪・堺市で建設中の液晶パネル新工場(総投資額3800億円)を分社化し、シャープが66%、ソニーが34%を出資する合弁会社にする。ソニーの資金負担は1000億円以上になる見通しだ。

2009年度中の稼働を予定する堺の新工場は、業界初となる3メートル四方の巨大ガラス基板を採用した世界最大級の液晶パネル工場。今回の提携はその堺工場の合弁化であり、同工場で生産するパネルは両社の出資比率に応じて配分するという。

会見の席上、ソニーの中鉢良治社長は、「当社が名実ともに世界一のテレビメーカーを目指すうえで、今回の合意は非常に重要なステップだ」と意義を語った。海外でも高いブランド力を有するソニーは、韓国・サムスン電子に次ぐ液晶テレビの世界2位。これまではサムスンとの合弁会社から主にパネルを調達してきたが、足元の販売台数は急激な拡大が続いている。「(ライバルの)サムスン1社に依存し続けるのは大きな経営リスクがある」(ソニー幹部)。堺工場への投資そのものに参画することによって、大型パネルを有利な条件で安定調達できる第二の供給源を確保し、液晶テレビ事業の拡大に拍車をかける意向である。

シャープが方針転換

今回、資本提携にまで踏み込んだのは、ソニー側の強い意向だ。出資によって新工場運営への権限と影響力を担保することで、ソニーはパネルの製造原価をはじめとする重要情報の把握が可能になる。当然、シャープとの価格交渉も進めやすくなる。

実は、今から5年前の03年春、ソニーは液晶テレビ事業の本格展開を始めるに当たって、真っ先にシャープへ合弁でのパネル共同生産を打診。だが、当時のシャープ経営陣は「経営の中核をなす液晶事業に他社の資本を入れるわけにはいかない」とかたくなに拒否。結局、実現に至らず、ソニーは消去法でサムスンと手を組んだ経緯がある。

では、なぜ今回、シャープは経営の根幹をなす液晶事業でソニーの出資を受け入れたのか。すべては社運を懸けた堺新工場への巨額投資回収のためである。

規模に劣るシャープがこれまでテレビ用の大型液晶事業で着実に利益を稼げたのは、業界に先んじてガラス基板の大きなパネル工場を作り、そのコスト優位性を武器に先行者利潤を享受できたからだ。亀山、亀山第二に続く今回の堺新工場もそうした「勝利の方程式」の延長線上にある。
 
 しかし、ガラス基板の巨大化に連動して切り出せるパネル枚数も飛躍的に増え、堺新工場のフル稼働時の生産能力は、大型の40インチ換算でも年間1200万台分以上になる。一方、シャープの今年度の液晶テレビ販売台数は小型サイズを含めても900万台弱。自社のテレビ用だけでは到底新工場のキャパシティは埋まらない。となれば、パネルを大量に買ってくれるメーカーをつかまえるしかない。
 
 もっとも、高価な大型液晶テレビを世界で大量に売れるメーカーは、おのずと限られる。その代表がソニーであり、昨年の大型液晶テレビ(40インチ以上)市場における同社の世界シェアは30%近くで断トツ(ディスプレイサーチ調べ)。堺工場の稼働率を上げて投資回収を実現するには、是が非でもソニーを逃がすわけにはいかなかったのだ。

「今回のソニーとの合弁で新工場の操業度が上がり、当社は液晶パネルで断トツのコスト競争力を持つことになる」とシャープのI山幹雄社長。シャープにとって、今回の工場合弁化は、プライドよりも実利を優先した決断といえるだろう。
(週刊東洋経済:渡辺清治、中島順一郎 撮影:尾形文繁)

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