人口少ない「Z世代」がここへ来て狙い目なワケ コロナでも「消費マインド」旺盛で親世代に波及

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次の図は、先ほどの自粛期間中のお金の使い方のデータを、10代のZ世代と日本人全体で比較したものです。これを見ると、新型コロナにかかっても重症化しにくい10代のZ世代は、上の世代と比べ、自粛しすぎずに実店舗に行っていたことがわかります。しかも、日本人全体で見ると縮小している非日常消費も、上の世代に比べると旺盛であることもわかります。

実店舗での買い物の変化

ショッピングモール21.8%、バラエティショップ16.9%、コンビニエンスストア21.5%、スーパー19.5%、ドラッグストア15.2%となっており、いずれも全世代の数値を大きく上回っています。

自粛期間中に外出し、移動距離も長く、結果、新型コロナにかかる割合が高いZ世代を中心とした若者たちが、メディアで批判されました。10代、20代というのは最も遊びたい盛りですし、叩かれるような行動をしていた人が一部にいたのは事実です。

しかし逆に考えれば、自粛期間中でさえ実店舗へ行く比率が高いくらい、彼らの消費マインドは強い、ということもできます。ですから、特に非日常消費に関わる企業やお店は、今こそZ世代、その中でもとくに10代を狙った施策を考えるべきです。

もちろん、彼らは上の世代に比べて人口が少ないし、所得も低いですが、「8ポケッツ」とも言われ、身の丈以上の消費行動を行うことができます。

『鬼滅の刃』は中高年層にも広がった

人口の少ないZ世代を単独で狙っても、市場ボリュームとして小さすぎると考えるのであれば、未曽有の大ヒット映画『鬼滅の刃』を参考にするとよいかもしれません。

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『鬼滅の刃』は、もともと少年誌である「少年ジャンプ」で連載されていた漫画で、Z世代の子ども、若者たちの間で人気に火がつき、それが中高年層へと広がりました。今どきの親子仲は大変密接になっているので(たとえ子どもが成人になっても)、互いに好きなものを教え合ったり、一緒に映画館に行ったりすることも普通になってきています。

つまり、Z世代の子どもを撒き餌にして、親と子をセットでつかむことがやりやすくなっており、この方法をとれば、すべての企業や商品は十分な市場ボリュームを得られるはずです。平成の間、「アクティブシニア」と言われ、消費の救世主と期待された高齢者は、新型コロナで重症化するリスクが高く、外出に対する不安感も強いでしょう。

効果的なワクチンが出回るまで、実店舗での消費は控え続けざるを得ません。厳しい言葉ですが、コロナ禍によって平成の間に信奉され続けた「アクティブシニア神話」が終焉した、と言うことができるかもしれません。

このコロナ禍により、Z世代かZ世代の親子をターゲットに据える企業やお店がもっと増えるでしょうし、増えるべきだと思います。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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