女性を平気で「下の名前」で呼べる人に思うこと 駅名略す人や自ら常連と呼ぶ人と共通点がある

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業界用語にも抵抗があります。いわゆる、逆さに言う慣習。

ザギンにシースー、ギロッポン。ギャグで言うのは別として、自然に発するのは芸能界に26年在籍する私も抵抗があるのは、まだどこかで「芸能人」という自覚が足りないからでしょうか。『徹子の部屋』こそ呼んでいただきましたが、いわゆるザ・芸能人になれていない。逆に、駆け出しの若手が「フジテレビ」を「CX」と呼んだり、「ケツがあるので」などと発していると、そういう、形式に憧れている奴はきっと売れないだろう、と心の中で査定しています。

余談ですが、「バーター」という言葉。これも業界用語で、「抱き合わせ」を意味しますが、「束で」というキャスティング時の言葉を逆さに言っているそうです。それを知ったときには、これまで無意識・無自覚に業界の慣習に従ってきたことへの恥じらいと嫌悪感に襲われ、大切な何かを取り戻すように「束で」という言葉を何度も口にしました。

いったい、どういう家庭環境で育ったのか

下の名前で呼ぶのも抵抗があります。同性はもちろん、異性に対してはなおさら時間がかかるタイプで、それこそ仮免期間が必要になります。

「なんて呼んだらいい?」

若い頃は、互いの名前をどう呼び合うか話し合う、甘い時間がありました。呼び方は、2人の距離を象徴し、実感するものでもあるので、下の名前で呼ぶにはそれなりの関係性を構築する時間が必要です。しかし、これに関しても、大して関係性を築いていないのに、平気で下の名前で呼べてしまう人がいました。

学生時代。サークルの女子に対して「カオル、飯行く?」とか「ヒトミ、今日来てないの?」とか、付き合ってもないのに自然に下の名前で呼ぶ男。いったい、どういう家庭環境で育ったのか。どこかで特別な訓練を受けたのか。帰国子女ならまだしも、埼玉に住んでいる分際で、そんなに親しくない女子たちを下の名前で呼んでいる。いつ距離を詰めたのか。いや、そう呼ぶことで詰めているのか。

どこかでうらやましいという気持ちもあったかもしれません。しかし、私はそんな男にはなりたくない。そして、よほどのことがないと下の名前で呼べない自分を、嫌いにはなれない。

外資系では、社員同士、相手が上司だろうが敬語を使わず下の名前で呼び合う会社もあるようです。そんな環境に配属されたら、私の体はたちまち蕁麻疹(じんましん)のようなものが出て、「下の名前外来」に通院することでしょう。それに慣れてしまっても嫌なのです。

そもそも海外の略し方は理解に苦しむものが多いです。ロバートがボブになったり、リチャードがディックになったり。もはや、略すというより変換。ボサノバのアントニオ・カルロス・ジョビンは、トム・ジョビンになっていたり。どこから「トム」はやってきたのか。「鈴木みゆきなので、チコって呼んでください」みたいなことでしょうか。非常にアメージングな世界です。

「常連」と呼ぶことにも、私はシビアな基準を設けています。2、3回行ったくらいでは「常連」とは言えません。しかし、1度しか行っていないのにもかかわらず、常連面する奴もいます。自分が常連だと思っていても店側がそう思っていない場合がある一方で、芸能人などは、1度しか行っていなくても「よく来るよ!」と誇大広告を出されたりします。わんぱくでもいいが、大して行っていないのに「行きつけ」「常連」感を出すような男には絶対なるなと、息子がいたら言うでしょう。

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