老舗「ヤシカ」復活に見るブランドビジネスの新世紀--連敗・電機業界の新たな切り札となるか

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 「ブランドを自社で育てるには大抵、膨大なカネを投資するか長い時間をかけるかのどちらかが不可欠。それが、製品原価の数%程度のロイヤルティを支払えばブランドが手に入るとはすばらしい」と藤岡社長は話す。

ヤシカ製品という“企業の顔”ができたことで、今後は自社製品の展開だけでなく、PB家電事業に意欲を持つ流通業にファブレス経営のノウハウを移植する新事業にも挑戦しようと計画している。

ヤシカをめぐるこのビジネスモデルが注目に値するのは、ブランドという資産が本来の持ち主企業から切り離され、新たな価値を生み出している点にある。

過去10年間、世界の電機業界では米アップルや任天堂のようなファブレス企業が台頭してきた。次の10年間はこの生産分業を土台にして、家電ブランドを供給する新しい分業モデルが増える気配にある。

従来も電機ブランドの売買や供与はあったが、生産力を持つメーカーによるブランド利用が大半だった。今後は非製造業の異業種プレーヤーが、続々と家電の世界に参入しそうだ。

それを印象づける例が、国内ですでに登場している。

パイオニアは09年11月、自社のブランド供与を柱とした戦略提携を中国の家電量販大手、蘇寧電器と締結した。蘇寧は今後、国内の生産委託工場で生産したパイオニアブランドの薄型テレビを販売できるようになる。一方、パイオニアも関連のAV機器をテレビと並列展示することで自社製品の販売拡大を見込めるという構想だ。

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