「食えない中小企業診断士」が今後増加する理由 合格率10年で「2倍」、質の低下も予想される

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一方、新浪剛史議員の提言は、狙いが違います。いま日本では、「超一流」と称される優良企業を含めて、事業をけん引できるビジネスリーダーが不足しています。その一つの原因として、アメリカのビジネススクール(MBA)のような社会人向けのリーダー教育があまり普及していないことが挙げられます。

中小企業診断士制度が平成13年(2001年)に改正されたとき、官民で「中小企業診断士を日本のMBAにしよう」と言われました。新浪氏は、ビジネスリーダー養成に中小企業診断士制度を活用し、日本のリーダー不足を解消しようと考えているようです。

ということで、中小企業庁と新浪氏で狙いは違いますが、「中小企業診断士を増やす」という方向では一致しています。

中小企業診断士が増えるメリット

中小企業診断士が増えると、さまざまな影響があります。まずいい面は、中小企業診断士の不足が解消されて、公的支援への対応が強化されることです。とくに長期戦が予想されるコロナ対応において、公的支援が進展するのは、朗報です。

また金融庁は、金融機関が取引先の経営状態を把握して取引をするリレーションシップ・バンキングを推進しており、地域金融機関に中小企業診断士の資格保有者を増やすよう指導しています。中小企業診断士の増加で、地域の金融機能が強化されるでしょう。

さらに、新浪氏の提言通りに中小企業診断士がビジネスリーダー養成のツールとして定着すれば、リーダー不足が解消に向かいます。MBAが主に大都市圏に立地しているのに対し、中小企業診断士は自己学習で取得できるので、地方でのリーダー養成にも寄与しそうです。

このように、中小企業庁と新浪氏の狙い通りに進めばさまざまなメリットを期待できます。ただ、問題もあります。

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