「もう無理」スペイン緊急事態で慟哭する飲食店 カタルーニャ州では10月14日から休業要請

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冷蔵庫は食材で埋まっており、仕入れ先が商品の支払いを求めてくるとし、「なぜ私たちが(感染拡大の)責任を負わねばならないのか、それを説明できる者は誰もない。公共の交通手段は(封鎖の)対象になっていない。(それよりも感染の可能性が低い)路上にテーブルを出す場合はなぜ営業してはいけないのだ?」と州政府の取った対策に不満をあらわにしている。

さらに同氏は、「パンデミックの間、小規模の業者は存続するために負債を背負った。それなのにいま、商売ができなくなっている。この営業停止の背後には、収入がなくなる人や。その家族のドラマがある。こうした人たちのことをもっと考えなければいけない」と語っている。

また、バル・レストランのオーナー連盟に籍を置くアルベルト・バッロス氏は、「バルやレストランに(感染の)問題があるとは思わない、むしろ家庭などで仲間が集まったところに問題がある」とデジタル紙『20ミヌートス』に語っている。公共の乗り物やパーティーのほうがバルよりも感染させる可能性は高いと指摘して、「(私の店は)テイクアウトをやっていないので、閉めることにした」としながら、「州政府は店の家賃の50%を負担してほしい」と嘆いている。

15日は耐えられるが、それ以上はわからない

レストラン「シセリン」のオーナー、ジョナタン氏は、経済専門デジタル紙『リブレメルカード』の取材に対して、税金の支払いを再度延期してもらわねばならないと明かし、「今回の営業停止で収入の半分を失うことになる(中略)15日間は耐えることはできるが、それ以上停止が続くとどうなるかわからない」と答えている。

カタルーニャレストラン連盟書記長ホアキン・ボアダサス氏も、「(封鎖が始まった)3月14日からまともに営業できないでいる。最初は閉めることにさせられた。その後は時間制限と集客数の規制。そして今また閉めなければならなくなった。従業員が休業補償を受けられるようにしないといけないし、家賃と税金は払い続けねばならないが、損害分を取り返すことはできない」と話す。

今回、休業要請をするにあたってカタルーニャ州政府はまず4000万ユーロ(約48億円)を救援金として用意し、資金繰りで問題のある業者には1万2000ユーロ(約144万円)以上の担保補償をする用意があるとしている。しかし、この救援金はあまりにも少額だと指摘されている。このような事態になって、独立派の政党が担う州政府も独立運動で騒ぐような事態ではなくなっている。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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