脱ハンコの先「都市のデジタル化」で来る大変化 日本で進む「スマートシティ」実現への取り組み

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「大丸有エリアで働く約28万人の就業者の個人データを預かって、パーソナライズされたサービスを提供していく。将来的には来街者を含めて100万人が集まる街にしたい」(三菱地所DX推進部の太田清部長)と、日本を代表するビジネス街をスマートシティ化で進化させていく。

EU(欧州連合)で開発されたFIWARE(ファイウェア)を担ぐNECを含めて、都市OSの開発も進んできた。2020年3月に内閣府が公表したリファレンス・アーキテクチャに準拠して、ほかの都市OSと連携する機能などを追加した。

2021年3月までに提供されるAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース)を装備して実証実験が進めば、地方自治体が都市OSを導入しやすい環境が整うことになる。

デジタル化で先行するシンガポール

「都市OSがあってもスマートシティを実現するのは簡単ではない。日本ではインフラ情報のデジタル化とデータの標準化が遅れているので、提供できるサービスが限られる」。日本大学教授、東京大学空間情報科学研究センター特任教授などを務めるビッグデータ解析、不動産経済学が専門の清水千弘氏は、そう指摘する。

アクセンチュアの中村氏も「スマートシティのサービスは大きく分けてインフラ系、行政手続き系、医療や教育などの住民サービス系がある。現状ではインフラ系サービスの提供が難しいので、ほかのサービスを先行させている」と打ち明ける。

清水教授が5年ほど前にシンガポール国立大学教授を務めていた頃、シンガポールでは建築確認などの申請を、3次元コンピューター設計システム「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」のデジタルデータで提出することが義務付けられていたという。

「当初はデータを標準化せずに導入したので失敗したが、再挑戦してシンガポールでは都市全体を3次元データで管理できるようになっていた。日本ではBIMの確認申請も始まったばかりで、建設業界へのBIM普及も進んでいない。自動車の自動走行には高精度のデジタル地図が必要になるが、道路台帳もデジタル化されていない」(清水教授)

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