労働市場改革の経済学 正社員「保護主義」の終わり 八代尚宏著 ~「誤った労働規制」に対し強い警鐘を鳴らす

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 低成長時代に正社員を増やすには、正社員の解雇規制を緩める形で、正社員と非正社員の待遇を隔てる壁を低くすることが必要だと論じる。

派遣労働を禁止した場合、最も害を被るのは雇用機会を失う派遣労働者であり、あるべき法改正とは現在の派遣事業者の取締法を派遣労働者の保護法へ転換することだという。

また、規制緩和を進め派遣企業が職業紹介事業や教育訓練事業などを兼業可能とすることで、人材ビジネス産業を育成する必要があると説く。それが新産業の育成となるだけでなく、日本の人的資源を向上させるため、有効な成長戦略になると評者も考える。

雇用にかかわる広範囲な問題とその処方箋を論じている。われわれが豊かになるには、一人ひとりの人的資源を高めていくほかに道はない。それが一部労働者の既得権を守ることではないことを、民主党政権も十分に認識すべきであろう。

やしろ・なおひろ
国際基督教大学教養学部教授。1946年生まれ。国際基督教大学教養学部、東京大学経済学部卒業。経済学博士(メリーランド大学)。経済企画庁、OECD、上智大学教授、日本経済研究センター理事長等を経る。2006~08年経済財政諮問会議議員。

東洋経済新報社 2310円 272ページ

    

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