考えを文章だけで表す人は図の威力を知らない 無駄をそぎ落とし必要なことをわかりやすく

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例えば、3つの異なる切り口に5つずつ要素があるとすると、箇条書きだと5×5×5で125行になってしまう。だとしたら下図のように、バラバラと要素を書き出し概念図にしたほうがわかりやすいはずだ。それを集中してにらみ、直感的にさまざまな組み合わせをイメージして考えれば、アイデアも浮かびやすくもなることだろう。

(出所)『武器としての図で考える習慣:「抽象化思考」のレッスン』(東洋経済新報社)
つまり図は、文章だけでは捉えられないものをわかりやすく、直感的に見せてくれるのだ。そのため本質的な理解が深まり、新しい着想を得るのに役立つわけである。
(63ページより)

「頭で考える」習慣が役に立つ

素直に白状すれば、本書を手にした時点では「頭で考える」ということに共感していたわけではなかった。難解なイメージを拭えず、理系の人が思いつきそうなことだというような偏見があったのである(事実、平井氏はもともと理系で、図やグラフを使うことに慣れていたという)。

ところが読み進めていくうちに、そんな思いが文系である自分の偏見にすぎないことがよくかった。直感的でわかりやすく、いろいろなことが腑に落ちたからだ。だから後半の「実践編」も無理なく受け入れられたし、少しずつでも図を描く習慣をつけてみようかなという気分になっている(まだ行動には移していないので、重要なのはこれからだが)。

平井氏も、人生のいろいろな場面で「頭で考える」習慣が役だったと過去を振り返っている。例えば、こんな感じだ。

・打ち合わせのとき、紙やホワイトボードに図を描くとすっきり議論が整理できた
・レポートやプレゼンを作るとき、工夫した図を入れると、けっこう高く評価された
・悶々と難しい問題に悩んでいたとき、紙の上で図を描いていると、いいアイデアが閃いた。
(「はじめに」より)

どれも日常の仕事で応用できそうなことばかりだ。先入観を排除して「図を描く習慣」を身に付ければ、このようにさまざまな可能性を広げることができるのかもしれない。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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