「回数券」何日出勤なら定期券よりお得になるか 時差出勤OKなら「時差回数券」も利用できる

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これまでに紹介した回数券とちょっと違うシステムなのが小田急電鉄だ。

小田急は今年の4月から、10枚分の値段で枚数が多い従来の回数券に代わり、販売枚数を10枚に固定して時間帯条件に応じて発売額が変わる方式の回数券「小田急チケット10」を発売している。

例えば220円区間なら普通回数券に相当するレギュラーは2000円、時差回数券に相当するオフピークは1830円、土休日回数券に相当するホリデーは1570円で、それぞれ9.1%、16.8%、28.6%オフだ。220円区間の場合は従来の回数券と同じ割引率だが、多くの区間ではレギュラーでも1割引より安い。

【小田急チケット10の1回当たりの運賃】普通運賃220円の区間
レギュラー:200円
オフピーク:183円
ホリデー:157円

筆者は昔からこのタイプの回数券が出ないものかと思っていた。これならどのくらいお得なのかがより明確で、往復で使う場合は中途半端に余りが出ることもないので使いやすい。

ただし、利用の際は表紙を持参する必要があるため、家族で買って全員バラバラに利用するといった使い方はできない。また、有効期限も他社の回数券が一般的に3カ月であるのに対し2カ月だ。理想をいえば、時間帯別で10枚ごとの値段がきっちり1割引、2割引、3割引となればよりわかりやすくなるだろう。

多彩なライフスタイルへの対応を

いかがだったであろうか。今後は今までのような平日週5日勤務、朝9時始業は多数派ではなくなり、多彩なワーク・ライフスタイルへの変化が進むことが予想されていく中、柔軟かつダイナミックな運賃メニューの検討は避けられないことであろう。

最近では通信、電力、ガスの自由化が実行され、多彩なライフスタイルに応じたさまざまな料金プランが選べるようになった。電力自由化では、1人暮らしの使用量でも最大1割安くなるプランが登場している。コロナを契機に「鉄道自由化」も検討すべきではないだろうか。

例えば携帯電話会社や旅行会社などが「小売り鉄道事業者」になり、電力で言うところの「託送料金」に相当するものを各鉄道運行事業者へ支払い、複数の鉄道にまたがったサブスクリプション型パスを多彩な運賃メニューや条件で出せれば、利用者の選択肢は格段に広がることであろう。鉄道事業者は時間帯や時間ごとの運行本数によって変動する託送料金で安定的に収益を得て、利用者ニーズに応じた販売は小売り事業者に任せる形だ。

都市鉄道の多くは平均客単価が初乗り運賃前後で200円にも満たない。条件を設定すれば都市鉄道会社1社全線乗り放題を月々1万円前後で出すのも不可能ではないだろう。こうした未来はそう遠くない将来、やってくるのではないだろうか。

北村 幸太郎 鉄道ジャーナリスト

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きたむら こうたろう / Koutaro Kitamura

1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。学生時代は株式会社ライトレールにインターン生として同社の阿部等社長のもと、同社主催の「交通ビジネス塾」運営などに参加。

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