経営者は方向性を的確に語りかけ、疲弊感をぬぐえ--『経営の教科書』を書いた新将命氏(国際ビジネスブレイン代表取締役、ジョンソン・エンド・ジョンソン元社長)に聞く

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--株主満足は。

もちろん株式会社であれば経営の最終責任は株主満足。株主の資金で会社は成り立っている。それも含め、すべての満足の決め手は社員、それも「社員品質」による。その品質を構成するのはスキルとマインド。スキルは仕事力であり、それに輪をかけて重要なのがマインド、つまり、人間力だ。この人間力は信頼、尊敬、情熱の三つがマインドを形作る重要な要素となっている。

仕事がべらぼうにでき、技能が高く、人間的に尊敬され、やる気も旺盛。そういう品質の高い社員は、必然的にいい商品を作りいいサービスを顧客に提供する。必然的に顧客満足が満たされ、納得のうえで買ってくれる。

--逆説的ですが、そうでないからこの本が売れている……。

何で今ごろと言われる内容かもしれない。現実には大企業のトップでさえわかっていない人がいて、後継者にも教えていないようだ。

確かに経営理論をわかっている人は結構いる。ただ、リーダーは人の心をつかまえて、やる気を持たせ、一定方向に導く。これには単なる知識やスキルだけではなく、マインド、人格性、勇気といったものが加わらないと、リーダーたりえない。

MBA教育は論理と数字は教えるが、「人間」のことは教えない。保持者で使いものになるのはほとんどいなかった。

(聞き手:塚田紀史 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

あたらし・まさみ
1936年東京生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスなどグローバル企業6社に四十数年勤務。うち3社で社長職、1社で副社長職を経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。

『経営の教科書』 ダイヤモンド社 1680円

  

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