過熱するスマートハウス開発の意外な盲点 従来のスマートハウスは非常時に役立たなかった!?

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難点はこれだけではない。自然災害などの非常時においては、停電が数日間続くことを見据えた対策が欠かせない。実際、東日本大震災では、停電した住宅の約2割が4日間以上も電気のない生活を強いられたという。ところが、一般的なPVシステムでは、停電すると非常用コンセントのみの給電となるため、EVへの充電ができない。停電前にEVに充電してあった電力を使い切ってしまうと、電気が復旧するまで運転も給電も不可能。電力が最も求められる肝心の停電時に、せっかくのEVの大容量蓄電池が宝の持ち腐れとなる懸念があった。

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EVパワコンの性能向上がポイント

今回の新商品は、EVパワーコンディショナーの性能を向上することで、停電時でもPVからEVへの充電を可能にした。停電が数日間続いてもEVパワコンが運転を続けるため、PVで発電した電力をEVに貯めることができる。

大容量のEVバッテリーであれば同時利用が可能な最大電力量は6000ワットと、一般的なポータブル蓄電池の約6倍。情報収集のためのパソコンやテレビだけでなく、IH調理器や冷暖房なども普通に使える。

積水化学・住宅カンパニーのプレジデントである関口俊一・常務執行役員は「停電時でも電気をつけたい、ガソリンがなくても車を動かしたいという、東日本大震災時のお客様の声が開発の背景にある。(電力会社の電力網に系統連携し、実用的に活用できる)業界初の新機能を搭載した。調べた範囲では、世界でも初の製品だ」と胸を張る。

エネルギー自給率は最大75%に

「グランツーユー V to Heim」では、EVパワコンがPV・EVからの充電・放電を自動化しており、操作上の負担がなく、電力会社からの電力も含めた3電源の最適利用を行う。また顧客のニーズにあわせて、運転モードの選択が行える。

たとえば、環境性能を最優先するモードでは、日照時間帯はPVで発電する電力、夜間は日照時間内にPVの余剰電力を貯めたEVの電力を使う。これによって、CO2排出量を計算上ゼロ以下にすることも可能となり、エネルギー自給率は最大約75%にまで高まる(一般的な太陽光発電住宅は約21%)。

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