豊肥線再開、「SL復活」で豪雨被災路線の応援を 肥薩線の列車走らせ観光振興に役立ててほしい

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新型コロナウイルス感染症の流行が発生するまで、阿蘇は海外からのインバウンド客にも人気の観光地で、阿蘇駅前には多くの来訪者の姿があった。それだけに、豊肥本線の運転再開は朗報以外のなにものでもない。状況が落ち着き次第、積極的な誘致を行いたいところだ。

豊肥本線の全線運転再開を祝う阿蘇駅前(筆者撮影)

JR九州でも、それは承知のこと。被災前から豊肥本線で運転しており、前面展望室や親子で座れるシートなどを備えた「あそぼーい!」を、さっそく熊本―大分―別府間に1往復、土休日を中心に設定。復旧をアピールしている。同じ区間には一般の特急「九州横断特急」1往復(「あそぼーい!」を運転しない日は2往復)の運転も復活している。

そのほか、九州新幹線と接続する熊本―阿蘇―宮地間には、新たに特急「あそ」3往復(うち2往復は土休日中心の運転)がデビューした。これは特別な観光列車ではなく「九州横断特急」と同じ車両が使われるが、阿蘇への観光アクセス改善が図られている。

ローカル輸送の改善も必要

これにて、熊本―阿蘇間を直通する特急は最大で5往復が運転されることになり、観光客の受け入れ体制が整えられた。それ以外の普通列車は、通勤通学客が多い熊本―肥後大津間が電化区間。肥後大津―阿蘇―大分間が非電化区間と分かれていることもあり、肥後大津での乗り換えが必要となるパターンが主だ。

路盤崩落現場をゆく豊肥本線の列車(筆者撮影)

観光産業以外で阿蘇地方の振興を図るとすれば、やはり政令指定都市としてかなりの規模を持つ熊本市との交流が不可欠であろう。熊本市内の主要駅と阿蘇との間は、普通列車で約1時間20分。特急でも1時間強かかることを思えば、ローカル輸送の改善も図りたい。

将来的には、現在のディーゼルカーの老朽化を睨みつつ、置き換え用として、福岡県の香椎線などで運転されている、蓄電池式電車BEC819系「DENCHA」の投入も考えられるだろう。これならば非電化区間も走れ、熊本―阿蘇―宮地間の直通も可能。肥後大津―宮地間は片道約30kmなので、蓄電池の性能的にも十分だ。既存車はロングシートだが、観光仕様にすることも考えられる。

直近の対応としては、肥後大津での接続改善を望みたい。現状のダイヤでは、ホームのすぐ向かい側で乗り換えられるパターンもあるものの、屋根がない構内踏切を渡って別ホームへ移る必要があるケースも存在する。これを解消する必要もある。

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