不幸な社員を生み出す会社の致命的な勘違い 「無関心」と「想像力の欠如」が不信感を増幅する

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過度な「社員幸福度」の追求は、かえって会社に対する不信感や、ストレスを増幅させてしまうようです(写真:xiangtao/PIXTA)
「社員の幸福度」を上げて、組織のパフォーマンスを高めていく――働き方改革の推進が叫ばれるとともに、ここ数年の間、日本ではそんな「幸福追求型」の組織マネジメントがたびたび取り上げられてきました。
しかし、MBA・経営コンサルタント・産業医として組織問題に取り組んできた上村紀夫氏は、「社員の幸福を追求する前にやるべきことがある」と指摘しています。上村氏の著書『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』を一部抜粋のうえ、再構成してお届けします。

現実とのギャップが大きすぎると社員は「シラケる」

社員の幸せと組織パフォーマンスの関連は多くの研究で取り上げられています。例えばユタ大学のテニー氏らによる2016年の論文では、社員の「主観的ウェルビーイング(心身の健康と幸せ)」が組織に好影響をもたらすことを明らかにしました。

「ウェルビーイング(well-being)」とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味しており、「幸福」と翻訳されることもあります。社員が自身の健康状態が良好で幸福だと感じることが、健康増進はもちろんのこと、欠勤の減少、自制心の上昇、モチベーションの上昇、創造性の増加、良い人間関係、離職の減少など好影響をもたらし、それらの結果として、組織・個人の良いパフォーマンスにつながるのだろう、と論文の中で結論付けられています。

社員の幸福が組織活性化につながることは確かでしょう。しかし、組織として社員幸福度を追求する施策に取り組めば、離職や欠勤、モチベーション低下などの組織課題が本当に改善するのでしょうか。

答えはNOだと私は考えています。今の時点で「幸せではない」状態なら、必ずマイナス感情が蓄積しています。そこで幸せ追求をはじめても、現実とのギャップが大きすぎるため社員はかえって「シラケる」という現象が起こります。「今の状況で幸せなんてとても想像できないのに、会社は何を言っているんだ」という状態です。

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