中国の富裕都市に忍び寄る「デフォルト連鎖」 なぜ杭州市は、「不良債権の巣窟」になったのか

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 4月28日、中国経済の成長エンジンの役割を担ってきた浙江省杭州市だが、今では同国の不良債権の3分の1の発生源にもなっているという。写真は人民元紙幣。2010年7月撮影(2014年 ロイター/Jason Lee)

[上海 28日 ロイター] - 中国・上海から南に約175キロに位置する浙江省杭州市。主要工業地帯の長江デルタにあり、経済の成長エンジンの役割を担ってきた。しかし今では、同国の不良債権の3分の1の発生源にもなっている。

中国メディアの報道によれば、杭州市の鉄鋼および繊維メーカーの間では、一部会社の債務不履行によって健全な企業にしわ寄せが及びつつあり、信用危機が起きつつあるという。

中国政府は、杭州市の萧山区を同国で7番目に裕福な地区と位置付けているが、繁栄の原動力の1つだった中小企業は、今や同市の足かせとなっている。企業の借り入れを容易にするための相互の融資保証ネットワークが、新たなデフォルト(債務不履行)危機を引き起こしつつある。

中国紡織工業協会のロバート・ヤン氏は「繊維業界は銀行にとって大きな借り手ではない。相互保証が悪化し、繊維メーカーが引きずり込まれているというのが現状だ」と語る。

中国企業の債務拡大は世界的な金融危機発生後から懸念されていたが、当局が市場の役割を拡大させる方向に舵を切ったことで、今年に入ってから一層問題視されるようになった。

中国では、民間企業が国有銀行からの融資に苦労することは珍しくない。こうした傾向は、経済減速や信用状況の悪化、当局による過剰設備解消への取り組みによって一段と強まっている。

萧山区の鉄鋼・繊維メーカーは長江デルタの他の民間企業と同様、こうしたハードルを乗り越えるため、銀行から融資を受けるために相互に債務保証を行ってきた。

こうした相互保証により、一部企業の債務不履行が黒字企業をも巻き込む連鎖反応につながる恐れがある。

浙江省の銀行業監督管理委員会は今年2月、同省の経済構造調整は危機的な段階にあり、相互保証によって引き起こされるリスクはかなり大きいと警告した。

<相互保証>

第一財経日報は、非上場のポリエステル糸メーカーのHangzhou Jianjie Chemical Fiberが最近、同社が債務保証した別の繊維メーカーがデフォルトしたことで破産を余儀なくされたと伝えた。

報道によると、Jianjieの破綻は別の繊維メーカー5社に影響を及ぼし、合計で30億元(約490億円)の融資が危機にさらされているという。

萧山区の銀行と企業の仲介役を務める団体のディレクター、Zhu Rujiang氏は同紙に対し、Jianjieが破綻した後、相互保証をしていた企業はさらに債務を引き受けざるを得なくなったと指摘。「まだ債務に対処でき、会社の存続に影響はないだろうが、銀行が融資を引き上げないことが主な前提条件だ」と述べた。

Zhu氏はロイターの電話取材に対し、コメントを差し控えた。

また同紙は、鉄鋼メーカーのHangzhou Zhongxin Steel Structure Manufactureが廃業し、12億元の銀行融資を他の4社が背負う可能性があると伝えている。Zhongxinのウェブサイトはすでにアクセス不能になっている。

浙江省のもう1つの富裕都市である温州で中小企業連合の副会長を務めるZhou Dewen氏は、「相互保証がもたらす危機は非常に深刻。良い解決策が見当たらない」と語った。

(Gabriel Wildau記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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