超学歴社会の受験生を襲うコロナと災害の恐怖 中国では今年の大学入試が後ろ倒しになった

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湖北省や浙江省に隣接する中国東部の安徽省の一部地域では、入試初日の7月7日、「50年に1度」とも言われる豪雨に見舞われ、道路が冠水して受験生が移動できなくなった。そのため地方政府は一部地域で初日に予定していた国語と数学の試験を中止し、9日に予備問題を使って追試を実施。2182人が参加したという。

湖北省黄梅県では入試2日目の8日、大雨で受験生576人が足止めされた。この時は政府や有志がフォークリフトや船で受験生を代替会場に輸送し、時間をずらして試験を実施した。武漢市や安徽省では入試後にさらに雨が強まり、洪水被害が広がっているため、7月初旬の入試実施は、受験生の安全を確保するうえでギリギリのタイミングだったとも言える。

入学は例年通り9月に実施する

入試の成績は7月下旬に開示され、受験生は成績を元に志望校を提出する。教育部や大学は、地域別の学生募集枠と成績を照らし合わせ、8月上旬に入学許可証を発行するスケジュールで、合格者は例年通り9月に入学を迎えられそうだ。

感染拡大が収束するどころか拡大の様相を呈する日本では、例年なら夏休みに入っている現在も休校期間の学習の遅れを取り戻すため、登校が続いている。3月初めから約3カ月の休校を経ても、オンライン授業の体制が整わなかった学校が多く、よほどの事態にならない限り、再度の休校は難しいだろう。

今年度から始まる大学入学共通テストの詳細はもちろん、試験範囲をどうするかなど具体的な内容は煮詰まらないままだ。アベノマスク、給付金、GoToトラベルキャンペーンとことごとく迷走しているのを見ると、入試も直前になって二転三転するのではないか、心配は尽きない。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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