「トランプ暴露本」で本当に困っている人は誰か 「ボルトンから身内の姪まで」4冊読んでみた

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それから半年後に、アメリカン・ジャーナリズムの大御所、ボブ・ウッドワードが”Fear”(邦題『恐怖の男』:日本経済新聞出版社)を送り出した。ゲイリー・コーン経済担当補佐官やレックス・ティラーソン国務長官など、「大人」と呼ばれる側近たちがいかに大統領を止めるか、面従腹背で仕えている様子が描かれていた。

もっともこのウッドワード作品、『大統領の陰謀』以下、描いてきた歴代の大統領モノに比してボルテージが低いように感じられた。あまりにも中身がくだらなくて、怒るに怒れなかったのではないだろうか。

「げに恐ろしき」はトランプ家

さらに7月になって、新たに登場した暴露本がある。トランプさんの姪に当たるメアリー・トランプ氏が上梓した“Too Much And Never Enough-- How My Family Created the World's Most Dangerous Man”だ。発売前から予約が殺到し、発売1週間で95万部が売れたというからただ事ではない。『これだけあっても満足できない~私の一家は、いかにして世界で最も危険な男を生み出してしまったか』という書名は、カネや名声や成功を追い求めるトランプ氏の心情を形容しているのであろう。本書もさまざまな暴露を行っている。

「名門・ウォートン校に入るときに、替え玉受験を行っていた」
「非情な性格で、兄が死んだときには病院を抜け出して映画を見に行った」
「信じられないほどのドケチで、贈り物を包み直して他人に進呈する(なおかつキャビアなど高価なものは抜き取る)ことがある」

この本の売りは「身内からの告白」であるという点だ。著者はドナルド・トランプ氏の実兄、フレッド・トランプ・ジュニア氏の長女で、現職は臨床心理士である。それが自分の叔父さんのことを、「ナルシシズムの9つの構成要件をすべて満たしている」などと評しているのだから面白い。

そんな風になってしまったのは、冷たい母親と厳しくて口汚い父親の下で育ったからだという。長男のフレッドは、父の期待に沿えないと感じてアルコール中毒となり、42歳で早死にしてしまう。次男のドナルドは、上手く立ち回って父の不動産業の後を継ぐことができた。そしてもちろん、兄が死んだときには何もしてくれなかった。祖父が死んだ際には、もちろん遺産相続で意地悪をされている。他人に情けをかけるのは弱さである、というのがトランプ家の家訓であるらしい。

てなわけで、大統領選挙を間近に控えたタイミングで身内から新たな暴露本が飛び出した。げに恐ろしきはトランプ家といえよう。これまでに散々、メディアとSNSの注目を一身に集め、世間を騒がせ、見る者を楽しませてきたトランプ劇場だが、そろそろ終幕が近づいているのかな、と感じさせるひとときである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページここからは競馬コーナー。夏競馬は新潟、名物G3予想!
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