不連続変化の時代 想定外危機への適応戦略 ジョシュア・クーパー・ラモ著/田村義延訳 ~「複雑系」で読み解く「予測が破壊される」現代

不連続変化の時代 想定外危機への適応戦略 ジョシュア・クーパー・ラモ著/田村義延訳 ~「複雑系」で読み解く「予測が破壊される」現代

評者 津田倫男 フレームワーク・マネジメント代表取締役

複雑系の研究で知られるサンタフェ研究所の部会議長であるだけに一つのテーマをめぐって示される事例が多岐多様でいちおしの出来上がりとなっている。レバノンのヒズボラの幹部との対話から始まる第1章で「革命の時代に突入した」と書く。心はイスラエル軍にあれだけ叩かれてもむしろ力を増してきた彼らを事例に挙げ、「想像だにできないことが現実のものとなる」時代を描くことだ。

本書のキーセンテンスの一つは「先を読むことは不可能であり、従来とは全く違う思考法が必要とされている」というものだが、それをF・ハイエク(経済学者)、投資アナリスト、L・サマーズ(米元財務長官)、ソ連崩壊の研究者、宮本茂(任天堂ゲーム開発者)、スパイマスター、ベンチャーキャピタリスト、ハッカーなどに語らせている。

「予測という概念が破壊される」現代を読み解くキーワードとして、「変革への強い意志と感受性」「(自ら)学習する複雑適応」という概念、「周辺部に狙いを定める」外交(や戦略)、「柔軟で適応力がある分散型の集団」などが使われている。「世界中のできるだけ多くの人間に力を与えることを目指す」という驚くべきメッセージもある。

ミッキーマウスの平和論、ナポレオンの帽子、単純化の代償、マッシュアップ戦争など目を引く挿話も多い。「システムの規模が大きくなると不安定な臨界状態に達し、様々な混乱が生じ、砂の山のような崩壊現象が起きる」というP・バクという生物学者の言葉も引用されているが、まさにリーマンショックとそれに伴う金融秩序崩壊を予言したかのようだ。評者が好きなくだりは「どんな小さなものでも、大きな変化の引き金になりうる」というバクの発言と「妻が気に入れば、脈がある」という宮本のWii開発秘話である。

Joshua Cooper Ramo
米国キッシンジャー・アソシエーツ専務理事。中国専門家。『タイム』誌、サンタフェ研究所、アスペン研究所名誉会長を経る。米中ヤング・リーダーズ・プログラムの設立者であり、世界経済フォーラム(ダボス会議)の「グローバル・リーダー・フォー・トゥモロー」に選ばれたこともある。

講談社インターナショナル 1890円 301ページ

  

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