アメリカで大統領選後に大混乱が起きるワケ トランプ氏は今から選挙に関して不穏な動き

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オハイオ州立大学法科大学院のエドワード・フォーリー教授は、大統領選は11月3日の投票時点ではトランプ優勢に見えても、その後、民主党支持者の割合が比較的大きい郵便投票など選挙日以降の開票作業を通じてバイデン票が徐々に増えていく「ブルーシフト」現象の可能性を指摘している。同様の現象は2018年中間選挙のフロリダ州上院議員選などでも見られた。

6月2日にペンシルベニア州で行われた予備選では民主党支持者は共和党支持者の倍の数で郵便投票を申請した。そのため、州会計監査長官選挙の開票作業に10日以上も要した。

ペンシルベニア州をはじめ多くの州は、州法を改正しないかぎり郵便投票の開票作業を選挙当日の前から始めることはできない。大統領選は大量の郵便投票の影響で選挙当日の11月3日に数千万票の開票作業を終えていないことが想定されており、接戦となるとみられている。例年のように夜中も起きて待っていても結果は判明しないのでムダだといわれている。

選挙後の開票作業の期間、トランプ大統領にとって劣勢な状況となれば、トランプ大統領および支持者は選挙結果の正当性について激しく攻撃すると予想される。超党派の投票者研究グループの世論調査によると、共和党支持者の29%が「2020年大統領選で不正投票の疑惑があれば、トランプ大統領がホワイトハウスを去るのを拒否することは妥当」と回答している。

ロシアによる選挙介入、民主主義攻撃のチャンス

再びロシアも介入?(写真:REUTERS/Kevin Lamarque)

さらに懸念されるのがアメリカの敵対国による選挙介入だ。選挙そのものへのサイバー攻撃の脅威もあるが、防ぐのがより困難なのが選挙後の混乱を煽る活動であろう。2016年大統領選でも選挙前にロシア政府の外交官が大統領選プロセスについて非難し、選挙結果の不当を訴える準備をしていた。

アメリカ国家情報長官室が2017年1月に公表した報告書によると、トランプ候補が負けた場合は、「#DemocracyRIP(#民主主義よ、安らかに眠れ)」をツイッター上で拡散する活動を親ロシア派ブロガーが企画していたという。敵対国は再びソーシャルメディアなどで選挙後の混乱拡大に関与することを狙っていると、アメリカの安全保障関係者は警戒を強めている。

2016年と比べても二極化が深刻化している今日、アメリカは社会不安に陥りやすい脆弱な状況にあるといえよう。2020年大統領選後、上記3つもの事象が同時に起こることで社会は大混乱となるかもしれない。アメリカ社会の根幹をなす民主的な選挙プロセスへの国民の信頼が失われることこそ、ロシアなど敵対国の狙いであろう。

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