アメリカで大統領選後に大混乱が起きるワケ トランプ氏は今から選挙に関して不穏な動き

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例年、投票所は地元のボランティアが支えているが、その多くは60歳を超える高齢者だ。彼らは年齢からもコロナ感染のリスクが高く、今年は感染懸念がある中、命を懸けてまで選挙運営に携わることは考えにくく、辞退者が続出するであろう。すでにアラスカ州のアンカレッジ市政府によると投票所で例年働くスタッフの95%が年内の選挙に携わることを辞退したという。

全米各地の投票所では若者のボランティアをかき集めなければならないが、人員不足に陥ることが喫緊の問題として浮上している。またこれらボランティアに対しコロナ感染を防ぐ安全を確保できるか疑問が広がっている。投票所のボランティアのための個人防護具(PPE)なども郡政府の間で奪い合いとなりかねない。

最も困ることは11月選挙時のコロナ感染の状況を誰も予想できないことだ。どれだけ多くの有権者が郵便投票を選択するのか、あるいは投票所に足を運ぶのか予測不能なため、どのように準備すべきかわからない。

ボランティア不足以外にも、従来、投票所として利用してきた老人ホームや各種公共施設はコロナ感染防止に十分なスペースが確保できないなどの理由で閉鎖されることも想定される。仮に投票所に足を運ぶ国民の数が予想を超えた場合、6月9日に行われたジョージア州予備選で見られたように投票所の外に長蛇の列ができ、混乱のもととなることが懸念される。

接戦で負けが濃厚ならトランプ氏は大暴れ

トランプ大統領は2020年大統領選における不正投票リスクについて警鐘を鳴らし始めている。2016年大統領選でも、不正投票の疑惑を選挙前に主張していた。当時、仮にトランプ候補がヒラリー・クリントン候補に負けていたら、トランプ候補が負けを認めず社会不安に至ることも予想されていた。政権発足後、トランプ大統領は得票数でクリントン候補を下回った背景には不正投票があったと訴え、ペンス副大統領とカンザス州のクリス・コバック州務長官率いる不正投票の調査委員会まで立ち上げていた。

さらに、2020年大統領選で4年前と異なるのが、新型コロナに伴う郵便投票の拡大により選挙制度を攻撃する材料が増えたことだ。トランプ大統領は6月22日、「郵便投票により、2020年はアメリカ史上、最も不正操作された選挙となる」とツイート。だが、ワシントンポスト紙の分析によると、2016年大統領選と2018年中間選挙で全有権者に対して郵便投票の機会を提供した3州の1460万票のうち、重複した投票または死者の名前で投票するなど不正が確認されたものは全体の0.0025%にすぎなかった。

自らも郵便投票を利用しているトランプ大統領だが、すでに同投票制度について大統領の支持者を中心に国民が懐疑的になるような発言を繰り返している。現在、大統領は選挙結果を操作しようとしているわけではない。しかし、選挙制度自体に疑問を呈することで、仮に選挙結果が正しいものであっても自らに不利な場合には不当と訴える手段を今から作っているとも指摘されている。

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