給与水準低下でこれから「家賃デフレ」が進む 民泊の賃貸転換も圧迫し、資産バブル崩壊も

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推計結果によると、所定内給与が1%ポイント変化すると、0.74%ポイントだけ「家賃」が変化するという関係があることがわかる。リーマンショック前後で所定内給与は前年同月比約1.5%ポイントのマイナス(2008年1月の同プラス0.6%から、2009年7月のマイナス0.9%までの変化)となったことを考慮し、今回のコロナショック前後でも同様の変化があったと仮定すれば、「家賃」は約マイナス1.1%ポイント(マイナス1.5%ポイント×0.748)となることが予想される。

なお、トレンド項①についても説明力が高く、「家賃」に対して毎月約マイナス0.009%ポイントの低下圧力がかかっていることがわかる。これは年間で約マイナス0.11%ポイントの影響であり、じわじわと影響が強くなっている。トレンド項①が示す「家賃」の長期的な下落要因を特定することも重要な論点である。

旅行需要の減少で「民泊」は「賃貸転換」

トレンド項②については、毎月0.045%ポイントの「家賃」の押し上げ効果があることが分かった。2018年10月以降の累計では「家賃」を0.8%ポイント押し上げてきたことから、無視できない要因である。

前述したように、筆者はこのトレンド項②は「民泊」の需要増加によってもたらされてきた「家賃」の上昇要因である可能性があると考えているが、「コロナ後」はインバウンド消費を中心とした旅行需要の急減による「民泊需要」の減少が「家賃」の下落要因になるかもしれない。

観光庁が発表した6月の住宅宿泊事業届出住宅数は前月比1.9%減の約2万0766件となり、2カ月連続で減少した。5月分は同1.0%減で、2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されてから初めての減少だった。

5月19日付・日本経済新聞電子版『民泊戸数、コロナで初の減少 宿泊市場に飽和感』によると、「民泊事業の売却や賃貸物件に用途を変更する例も出てきた」という(賃貸転換)。「民泊は住宅の空き部屋を活用する例が多い」ため、「観光客が見込めず、賃貸物件として売り出すケースもある」という。

むろん、民泊市場の規模(届出数)は貸家新設住宅着工戸数の1カ月分をやや下回る程度であり、需給バランスに与える影響は限定的だろう。しかし、ローンで物件を取得した民泊のオーナーなどが、資金繰りのために相場よりも安く賃貸物件として市場に出せば、市場価格全体を押し下げる要因になる可能性もある。

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