「日本のコロナ対策」初期対応は成功したワケ 自粛は不要だったという批判はなぜ起きたか

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7月6日、新たに設置された新型コロナウイルス感染症対策分科会の初会合に出席した(前列左から)加藤厚労相、尾身茂氏、西村経済再生相(写真:共同通信)

東京都の感染者が100人を超える日が続いています。第2波が来たら日本はどのように対策するのでしょうか――。

6月24日に廃止された新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下、専門家会議)にエビデンスを提供していた「クラスター班」の一員に厚労省参与として従事した経緯から、日本のコロナ対策について私の個人的な意見を述べたいと思います。

日本の一般的な政策について

政策の評価を分析すると、わが国はおおよそこのパターンに落ち着きます。

(1)新たな危機に対して、初期対応システムは奇跡的にうまくいく。
(2)初期対応への批判に迎合して政治主導によりシステムが取り潰される。
(3)他分野の専門家や著名人が入り、経験や体験談、的外れのエビデンスをベースとした新たな議論が始まる。
(4)誰も責任を取らないような総花的な提言等しかできず、本質的な対応ができない。
(5)情勢が悪化するも、誰も責任を取らない。よって支援や補償もない。
(6)過酷な国民の負担と頑張りによって何とか持ち直す。
(7)最初に戻る。

コロナ対策では、伝統とも言えるこのパターンを防がねばなりません。(6)の過度な負担を国民にかけないために、建設的な議論をしたいと思います。

今年1月から徐々に日本にもコロナウイルス被害拡大の可能性が出はじめ、疫学の研究者は日本への影響を確信し、厚労省にクラスター対策班が設置されました。大学教授は1~3月は講義が少なく、入試業務の担当に当たらずその年度で提出すべき研究報告書等がなければ、最も時間があります。さらにコロナによる自粛で4~5月はオンライン講義で地元にいなくていいことなどが幸いし、北海道大学や東北大学などの稀代の天才集団が集結しました。クラスター班の役割は、専門家会議の委員の方々へ提供するエビデンスづくりです。つまりバックオフィス(兵站:へいたん) なのです。

バックオフィスであるクラスター対策班には、メンバーには入らなくてもこの国難に研究者として協力しようと、著名な公衆衛生や疫学の専門家がサポートをしていました。バックオフィスのバックオフィスです。層に厚みが増し、創造的で革新的なアイデアが西浦博教授(北海道大学)を中心に生み出されました。

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