プロ野球開幕、名伯楽ノムさんが遺した大予測 「結果を出すトップ」はここが違う

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ライオンズは、リーグ随一の強力打線を武器にリーグ連覇を達成した。俊足巧打の秋山翔吾、金子侑司が出塁すれば、その後には森友哉、山川穂高、中村剛也らが揃う超重量級打線が待ち受ける。2019年のシーズンでは秋山が最多安打、金子が盗塁王、森が首位打者、山川が本塁打王(2年連続)、中村が打点王を記録しており、相手ピッチャーからしてみれば、これほどまでに隙のない打線を相手にするのは相当に厄介なことだったに違いない。

しかし、強力な打線があったとはいえ、ライオンズの投手陣は防御率も高くなく、駒不足の感が否めなかった。そんな手薄な投手陣をうまくやりくりしながらリーグ2連覇を成し遂げたのは、指揮官である辻発彦の力量に負うところが大きいと思う。

稀有な「職人気質」の辻

辻と私は、1996年から1998年までの3シーズンを東京ヤクルトスワローズでともにすごした。

ライオンズを退団し、スワローズに辻がやって来たのは彼が37歳の時だった。ライオンズは辻にコーチ就任を打診したが、彼は現役続行を希望した。

リーグこそ違えど、日本シリーズではライオンズと度重なる死闘を演じていたから、辻の実力は当然知っていた。彼は当時の球界でも数少ない「考えて野球をする」タイプの選手だった。「こんな選手がうちのチームにもいれば」と何度思ったことか。

身体的な動きがピークを越えていたとしても、彼の頭脳があればまだまだ野球ができる。さらに、彼ほどの経験を積んだ選手はそうそういないから、生きた教本として他の選手たちにいい影響を与えてくれるはずだ。私はそう考え、辻が自由契約になったと知るや否や、すぐに獲得に動いたのである。

辻は広岡達朗監督の下で野球の基礎を学び、森祇晶(昌彦)監督の下で自らの生きる道を究めた、今や数少ない「職人気質」の考えるプロ野球選手と言っていい。私の狙い通り、彼はチーム内に非常にいい影響を与えてくれた。辻はそんな考える野球のできる、私好みの選手だった。

これまでに多くのベテラン選手に出会い、再生させてきたが、辻はその経験から、自分が周囲に与える影響も意識、実行してくれ、チームの土台作りにも多いに貢献してくれたように思う。

「自分が生きていくためには何をすればいいのか?」、それを考えることのできる人が、伸びていくのだ。

私が注力していたのは、「1人でも多く、私の考えを理解している選手を増やす」ことだった。だから、「本当に理解しているかどうか」の確認作業を常に怠ることはなかった。

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