STAP騒動で揺れる日本の科学振興策

「直属の部下ではない」――笹井氏が話したこと

会見の中で、笹井芳樹CDB副センター長は“責任範囲の狭さ“を強調した

4月16日、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長が記者会見を行った。研究員である小保方晴子氏による論文不正に関し、「日本のサイエンスに対する信頼をそぐ結果になった」と謝罪。笹井氏は、何度も頭を下げた。記者からの質問が続き、会見は3時間25分にも及んだ。

笹井氏は、論文の第1著者である小保方氏を指導する立場の「シニア共著者として、痛恨の極み」と心中を表現した。研究不正の疑義が浮上してから2カ月、山梨大学の若山照彦教授に始まり、2度にわたる研究不正調査委員会会見、今後のSTAP検証実験の方針を説明した丹羽仁史CDBプロジェクトリーダー、私費で会見を開いた小保方晴子氏と併せて、理研に関係する会見は一通り終わった。当面は小保方氏の不服申し立てに対する審査と、丹羽氏による検証の動向を見守ることとなる。

振り出しに戻ったSTAP現象研究

論文不正に関する調査委員会に課せられた6つの調査項目以外にも、STAP論文には数多くの疑惑が表面化している。しかし笹井氏は、「少なくとも自身の指導によって撮影したライブセルイメージング(顕微鏡ムービー)は、全自動で撮影されるもので人為的な操作ができない」と説明した。その画像には、他の知られている細胞には見られないものがあり、それは疑惑にあがっているES細胞の混入や自家蛍光では説明できないという。

「少なくともこれまでにはなかった現象があった」との説明だ(この件は、すでに大隅典子分子生物学会長らから異論も出されている)。だが、仮説段階に戻ったということは、今回の論文自体の意味はなくなるということ。そのため、「論文は撤回が適切」と言明。小保方氏の「STAP現象はあります」という信念とは別に、STAPの存否問題は完全に振り出しに戻った。

巷間ではノーベル賞を受賞した、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長への対抗心があったとも報じられている。つまり笹井氏自身に功名心があったのではないか、という臆測だ。これについて笹井氏はきっぱりと否定してみせたが、心の中のことであり、真相のほどはわからない。

民間企業であれば、研究部門に務める職員が行う不正は、重大な不祥事のひとつだ。仮に、他社の実績をあたかも自身の研究成果のように”コピペ”したことが発覚すれば、本人は懲戒解雇を含む厳しい処分を受けるだろう。さらに、直属の上司だけでなく担当役員にまで管理不行き届きによる減給、降格、左遷など厳しい処分がありうる。企業にとっては、研究部門だけの問題ではすまない。関係した製品はもちろんのこと、企業の信頼性やイメージにもかかわる重大な問題であり、”なぁなぁ”で済ますわけにはいかないのだ。

しかし、大学をはじめとする公的な研究機関では状況が異なる。もちろん本人には厳しい処分が下され、直属の研究室を主宰する教授も相応の処分を受ける。直接の関与はなくとも管理責任を問われ、処分を待たずに引責辞任する場合も少なくない。だが、そのことによって直接研究に関係のない学部長が処分を受けたり、まして学長のようなトップにまで累が及んだりすることは考えにくい。責任は狭い範囲に限定される傾向がある。

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