地味な横須賀線「E217系」はJR東の歴史を変えた カシオペアや四季島のルーツにもなった?

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E217系は2階建て構造のグリーン車を連結していた。2階建てグリーン車の元祖は1989年に登場した211系用サロ212形、サロ213形、113系用サロ124形、サロ125形。台車間の台枠をバスタブ構造とし、1階の床面を落とし込んでおり、定員を確保するため全長を2万0500mm(普通車プラス500mm)、台車中心間距離を1万4150mm(同プラス350mm)とし、車両限界に抵触しないよう全幅を2900mm(同マイナス66mm)とした。なお、全高は4070mmとされ、各車端部屋根上に集約分散式空調装置を1基ずつ搭載した。

カシオペアの客車E26系(写真:スポッティー/PIXTA)

E217系でも車体各部の基本寸法を踏襲。ただしビードレス(補強なし)の車体外板を採用したため車体が平滑となり、印象は変わっている。また、リクライニングシートも片持ち構造が新たに採用された。以後E231系、E233系、E531系、E235系の2階建てグリーン車の車体も、基本はE217系と同様となっている。

1999年、JR東日本は上野―札幌間を運行する豪華夜行列車「カシオペア」の運行を開始し、専用車両E26系を製造した。従来日本の豪華夜行列車は欧州の「オリエント急行」を意識したものが多かったが、カシオペアはアメリカの大陸横断鉄道をイメージし、ステンレス車体を採用したのが大きな特徴だ。

「四季島」のルーツもE217系?

個室は2階建てもしくはメゾネット構造を主体とし、食堂車は2階を食堂、1階を厨房および通路とすることで、12両編成中11両が2階建て構造となった。2009年に筆者が取材した際、E26系の2階建て構造車体は、E217系2階建てグリーン車をベースとして開発されたという。

もっとも客室設備等がまったく異なるため、E217系と細部の寸法は異なる。E26系は個室の面積を稼ぐため、全長2万0800mm(E217系プラス300mm)、台車中心間距離1万4600mm(同プラス450mm)と拡大する一方、車両限界内に収めるため全幅は2880mm(同マイナス20mm)となっており、E26系の車体はE217系よりも長く、幅はわずかに狭い。全高はE217系と同じ4070mmとなっている。であるので、E217系の車体構造をベースとして、E26系用に寸法を最適化したという見方のほうがわかりやすいかも知れない。

なお、E001形「TRAIN SUITE 四季島」の5〜7号車も2階建て構造を採用している。車体はE26系をベースとして、全長はE26系と同じ2万0800mm、全幅は20mm拡大した2900mmとし、その分台車中心間距離を1万4400mmに短縮した。この車両もルーツはE217系や211系だと見ることができそうだ。

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