地味な横須賀線「E217系」はJR東の歴史を変えた カシオペアや四季島のルーツにもなった?

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扉と窓の配置は通勤型電車の209系とほぼ同様。ただし車体幅2950mmの拡幅車体を4扉車で初めて採用したのがE217系の特徴となる。また、車体幅が広がったことで車両限界に抵触しないよう、台車の取り付け位置を209系よりも車端部側に250mmずらした。その結果台車中心間距離も209系の1万3300mmからE217系は1万3800mmに広がった。

E217系のセミクロスシートは、扉脇に2人掛けロングシート、扉間にクロスシート1ボックスを配置した。先行車のクロスシートは通路側に脚台があったが、量産車は片持ち構造を採用。この構造はJR東日本の標準となった。

なお、E235系の普通車はオールロングシートとなり、セミクロスシートの設定はされない。

前述した通り、E217系は幅2950mmの拡幅車体を採用した。また、209系では固定式だった扉間の窓は、先頭車の運転台側を除いて開閉可能なものとした。

この拡幅車体はJR東日本型車両の第2世代の試作車209系950番代(後にE231系900番代に形式変更)と、同時期に製造された通勤型電車209系500番代にも採用され、以後地下鉄乗り入れ車両を除く通勤型車両も拡幅車体が基本となった。また、E231系からは一般型電車と総称するようになり、同一形式で通勤タイプと近郊タイプを展開するようになっている。

なお、拡幅ステンレス車体は気動車のキハE120形、キハE130系やハイブリッド車のキハE200形、HB-E210系等のベースにもなった。

先頭車にクラッシャブル構造を採用

E217系が運行する区間には踏切が多く設置されている。また、1992年に成田線大菅踏切でダンプカーとの衝突により運転士が死亡、乗客65名が負傷した重大事故の発生をうけ、JR東日本は113系の前面に鋼板を追加して強度を高めた。

武蔵野線を走る209系(写真:飛鳥の人/PIXTA)

当時開発中だった209系通勤型電車の量産車は、前面の骨組みを追加して強化したほかスカートも強化。運転室の奥行きを1860mmに拡大し、運転室背後の仕切り壁には非常脱出口を設置した。

E217系の先頭車は踏切事故の際に乗務員と乗客を守るためのクラッシャブル構造を採用した。これは運転室の奥行きを2120mm(209系より260mm広い)として、乗務員扉部分を衝突時に衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンとすることで、運転台と客室部分(サバイバルゾーン)を守るというもの。また、前面窓の下、FRPパネルに覆われている部分には、衝撃を吸収するためアルミハニカムパネルが設置されている。

このクラッシャブル構造はE231系近郊タイプに継承されたほか、E233系では地下鉄乗り入れ仕様の2000番代を除く各タイプの先頭車に採用した。以後、E531系、E235系に採用されている。また、E233系をベースとした相模鉄道11000系も同様のクラッシャブル構造を採用した。

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