日本にはなぜ"マルチアスリート"がいない?

中学最速スプリンターが野球を選んだ理由

なぜ日本には、複数の競技をするアスリートがいないのか?(写真は昨年の全日中で中学最速スプリンターになったが、高校では野球の道を選んだ五十幡亮汰。写真:北村大樹/アフロスポーツ

春は「出会い」の季節であり、同時に「別れ」のシーズンだ。それは人間関係だけではなく、スポーツも同じ。毎日のように汗を流した“あの場所”と決別する日がやってくる。この春、15歳の有能なアスリートがひとつの選択を迫られた。昨年の全日本中学陸上競技選手権大会(以下、全日中)で100mと200mを制した五十幡亮汰だ。

陸上界で注目を集めた“中学最速スプリンター”は、別のスポーツを選ぶ。それは野球だった。五十幡は地元埼玉を離れて、春のセンバツ甲子園で、初のベスト4に進出した佐野日大(栃木)に進学した。

五十幡は東京神宮シニアに所属していた野球少年で、シニアリーグの選手にはよくあるパターンで、中学時代を過ごしてきた。通っていた中学にも野球部はあるが、軟式ということもあり、学校での部活では陸上部を選択。平日は学校の陸上部でトレーニングをして、土日にシニアの練習で野球センスを磨いてきた。

これだけではどこの中学校にもいる野球少年にすぎないが、昨年の夏休み、五十幡は“マルチアスリート”の能力を発揮した。野球では8月2~6日の日本選手権で準優勝。8月10~14日のジャイアンツカップ(全国大会)でも3位に入り、チームの「1番・センター」として大活躍した。陸上では、8月20~22日に行われた全日中で100mと200mを制して、スプリント2冠を達成したのだ。

筆者が五十幡を取材したのは全日中のとき。野球少年という情報を得ていたために、カラダの出来上がった選手かなと勝手に想像していたが、まったく違っていた。中長距離選手のようにスリムな体型で、スタートからの加速がすばらしかった。そして、実際に話を聞いてみると、五十幡が速く走る“技術”を知っていること、その“修正能力”に驚かされた。

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