京急の駅名変更、「葉山」追加はイメチェン狙い? 認知度アップで誘客強化、「密」回避の課題も

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若年層の「海離れ」もあってかつてのような盛況ぶりはなくなったが、近年、逗子・葉山エリアで目立つようになったのは、ふらっと訪れる女性の日帰り旅行客だ。カフェやレストランには女子受けするメニューがそろい、海岸沿いを中心にフォトスポットも多い。葉山町は2015年に町の魅力を発信するインスタグラムの公式アカウントを開設。フォロワー数は現在、約3万2000人に増えている。

京急が最近、同エリアで力を入れているのが「葉山女子旅きっぷ」による誘客だ。往復の電車とエリア内の京急バスのフリーきっぷ、食事券の「選べるごはん券」、お土産との交換やアクティビティ体験に利用できる「選べるごほうび券」がセットになった企画乗車券で、主要駅から3000円台で利用できるお得感が人気という。名称は「女子旅きっぷ」だが、“男子”だけで使うこともできる。

末っ子がすくすく成長

同社では、企画乗車券「みさきまぐろきっぷ」「よこすか満喫きっぷ」と合わせて「3兄妹きっぷ」と呼ぶ。3兄妹の「末っ子」として生まれた葉山女子旅きっぷは、すくすくと成長している。

休日午前に横浜以南を走るエアポート急行の車内では、きっぷのリーフレットを見ながら日帰り旅のプランを相談する女性のグループが目立つようになった。毎月の習い事に通う際に使う人もいるという。2015年9月に販売を開始して以降、売上枚数は右肩上がりで伸び、直近の2019年度には前年度比52%増の8万3202枚を記録した。

パワースポットとして女子に人気の森戸神社(記者撮影)

天皇即位で御用邸のある葉山に関心が高まったほか、人気キャラクター「すみっコぐらし」とのコラボキャンペーンが追い風となったとみられる。10月に実施したきっぷの「リニューアル」も奏功した。リニューアルでは、食事ができる店舗を20店舗から29 店舗へ拡大。11店舗だったおみやげ・アクティビティ施設を24店舗に増やした。ビーチヨガ体験や、神奈川県立近代美術館葉山館の観覧、葉山マリーナの「江ノ島・裕次郎灯台周遊クルージング」が含まれる。

一方で、品川駅発が3000円、横浜駅発が2800円だったきっぷの値段を改定、それぞれ500円引き上げた。17%程度の大幅な値上げだったが、同社営業企画課の尾形祐佳さんは「サービス内容が充実したためか、結果として目立った拒絶反応は見られず、おおむね好意的に受け入れていただいている」とみている。「これまで『海』のイメージの強かった葉山の新たな魅力として、自然豊かな『山』(上山口の棚田)でもお楽しみいただけるようにした」のもリニューアルの特徴と位置付ける。

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