ポストコロナ「インターネットがカギ握る理由」 さまざまなリスクを国際協調で乗り越えよ

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次に、インターネットは人類にとって、持続を意識して、運用と発展を考えなければいけない領域だということである。気候変動、ウイルス、そしてインターネットは100パーセントグローバルな領域での人類全体への挑戦であり、そこでのカギは退治や撲滅ではなく、地球と人間、環境と人間性の持続性が最大の価値であるという価値の評価軸である。

最後は、グローバル空間に対するセキュリティー・ガバナンス上での明確な役割の認識が必要だということである。国が関与してほかの国の攻撃にインターネット空間を利用するのはサイバーディフェンスの領域であり「国際空間」の文脈での対応が必要だ。インターネット空間を利用した犯罪行為はサイバークライムの領域であり国際的な連携も含めて、「国内空間」の文脈での対応が各国において必要だ。

「グローバル空間」への深い理解が必要

しかし、サイバーセキュリティーには、地球と人類の視点を持った「グローバル空間」への深い理解が必要となる。これらの3つの空間の文脈を統合的に意識した明確な政策構造はわが国にも世界にもまだ存在していない。ウイルス、気候変動、インターネットの3つで共通しているのは、グローバルな挑戦にはグローバルな解決しかないこと、そして政治家と科学者・技術者のパートナーシップが不可欠であるということである。

インターネットの技術標準はIETFと呼ばれる会議体で推進され、やがて、関連する計画や政策に関する組織たちを生み出した母体となるコミュニティーが集っている。このコミュニティーで最も頻繁に引用されるフレーズはMITのDave Clark教授の「われわれは王、大統領、投票を拒む。私たちが信じるのは、大枠の合意と動作するプログラムである。(We reject kings, presidents, and voting. We believe in rough consensus and running code.)」 という発言である。

この信条は、共和主義や民主主義とも異なる、グローバルに、自由なデジタルデータを共有・交換できるインターネットの基盤が健全に運用と発展を続けられることという、地球環境問題にも通じる、「持続主義」とも呼べる強い理念によって、先導力を持ち続けている。

それは、別の言い方をすれば、「ソーシャル・エンパワーメント(社会課題解決力)」ということにほかならない。中国のデジタル・レーニン主義ではない。シリコン・バレーのプラットフォームでもない。もう1つの選択肢の可能性が存在するか否か、がコロナウイルス危機において今まさに試されているともいえるのである。

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