アップルとサムスンに、一段の値下げ圧力

大衆化が一段と加速するスマホ

4月9日、スマホの販売競争の主戦場が大衆市場に移りつつあるなか、世界の2大メーカーである韓国サムスン電子と米アップルは、ハイエンド機種の値下げ圧力に直面している。写真は昨年8月撮影(2014年 ロイター/Dado Ruvic)

[ソウル 9日 ロイター] -スマートフォン(スマホ)販売競争の主戦場が大衆市場(マスマーケット)に移りつつあるなか、世界の2大メーカーである韓国サムスン電子<005930.KS>と米アップルは、ハイエンド機種の値下げ圧力に直面しており、それによって利益率のさらなる低下に見舞われる可能性がある。

サムスン電子が8日発表した第1・四半期の業績見通しは、2四半期連続の減益予想となった。主力の新スマホ「ギャラクシーS5」の韓国での販売価格は、一世代前の「S4」を10%程度下回る水準に設定。「S5」は11日からの世界同時発売に先行して韓国で先月発売されたが、こうした「値下げ」は初めて。有料アプリなどを無料で提供する60万ウォン(約6万円)相当の「ギフトパック」サービスも投入した。

スマホは先進国など成熟市場の伸び悩みで、ハイエンド機種の売り上げが鈍化。調査会社IDCによると、日本では2014年にスマホ出荷台数が減少する可能性がある。一方、安い機種なら25ドル(約2500円)で端末が手に入るマスマーケットは、各メーカーにとって新たな競争の場となっている。

「S5」の値下げには、利益率を犠牲にしても、より上質な機種への買い替えを促したいサムスン電子の思惑が透けて見える。同社モバイル部門の営業利益率は、2013年第4・四半期に16%まで低下した。

IBK証券のアナリスト、リー・スンウ氏は「サムスン電子が利益率の確保にどれほど苦しんでいるかが示されている。ハイエンド機種の需要見通しが依然不透明な中、プレミアムモデルを低価格で提供している」と指摘した。

スマートフォンの上位機種は、価格が300ドルを上回り、高解像度のディスプレーや高品質のカメラなど多くの機能を搭載しているが、「S5」はハード面で「S4」からほとんど変更がない。業界専門家は、サムスンがハイテクに精通したユーザーより、幅広いマスマーケットに注力しているとみている。

同社はアップルに比べて幅広い製品を取りそろえており、製造コストが低下していることを踏まえると、ある程度の値下げ余地がある。

IMインベストメントのアナリスト、LeeMin-hee氏は、バッテリーからスクリーン、プロセッサーやセンサーといった「S5」を構成する部品のコストは、「S4」を10─15%下回ると指摘する。

こうした状況は、より少ないコストで質の高いスマートフォンの製造を可能にするものの、企業にとっては高級なブランドイメージを維持するのが難しくなる面もある。

フォレスター・リサーチ(シンガポール)のアナリスト、クレメント・テオ氏は「サムスンはターゲットにしている市場を明確にする必要がある」と指摘。「アップルはiPhoneの価格を新モデルでも下げなかった。この姿勢が高級なイメージの維持につながり、特定の忠実なユーザー基盤を取り込んでいる」と語った。

だが、アップルもマスマーケットの潜在的な成長力を認識しつつあるようだ。サムスンとの米特許訴訟で明らかになった内部文書によると、アップル関係者の一部は自社製品の価格が高過ぎると感じているという。

価格設定

米裁判所に提出された2013年4月の資料によると、幹部らは2014年度の計画について議論した際、消費者が、アップルの提供していない、より大きな画面を搭載した300ドル未満の手ごろなモデルを求めているとの結論に達したという。

この資料がどの程度アップルの考えを反映しているかは明らかでない。また、これまでハイエンド層をターゲットに成長してきたアップルが戦略をシフトさせる兆しは見られておらず、現時点でアップルからのコメントも得られていない。

アップルの2013年度第3・四半期のiPhone出荷台数はわずか8%増と、倍以上に増加した5年前の状況から一変している。

BTIGのアナリスト、ウォルター・ピエシク氏は「(マスマーケットに対応した)製品を投入しないことで、アップルは売上拡大の機会を見送っている」と指摘。投資家がアップルに主に期待しているのも、売上高の伸びを急回復させるウエアラブルデバイスといった新製品を生み出すことだと語った。

アップルは昨年、主として新興国市場向けに、iPhoneの廉価版「5c」を上位機種「5s」より100ドル安く発売したが、目を見張るような成功は収めていない。一部のアナリストは、利益率を犠牲にすることに消極的な同社の製品は、価格面の魅力が不十分だと指摘している。

利益率の低下

アップルは競争が激化する市場で差別化を図るため、iPhoneにより多くの機能を搭載しており、利益率は低下傾向にある。市場シェアの縮小に伴い、サプライヤーへの影響力も低下しており、アップルが予想通り大きな画面の端末を投入すれば、利益率は一段と落ち込む可能性がある。

バーンスタイン・リサーチのアナリスト、トニ・サコナギ氏の試算では、画面を30%大きくするだけで粗利益率は4─5%ポイント低下するという。

アナリストらによると、iPhoneの利益率は現在40%半ばで、数年前の50─60%からは低下している。

未来アセット証券のアナリスト、DohHyun-woo氏は「iPhone6では画面大型化と革新的なデザイン変更を施し、アップルはプレミアム価格を維持するだろう。価格設定でサムスンほどの大きな変更を行う可能性は低い」と指摘した。

中国企業の台頭

サムスン電子、アップル、華為技術(ファーウェイ)、LG電子<066570.KS>、レノボ・グループ(聯想集団)<0992.HK>という世界の上位5社以外の市場シェアは、昨年には計39.3%と、2011年の27.4%から拡大した。

その背景には、ノキアやブラックベリーに加え、複数の中国企業が、人口の多い新興国市場向けに安価なモデルを投入していることがある。

華為技術やレノボのほか、金立(Gionee)、欧珀(Oppo)、中国無線科技<2369.HK>といった中国の地場メーカーも、技術や設計の専門知識を習得し、市場シェアを伸ばしつつある。

IBKのリー氏は「現在の市場環境で勝者となるのは、費用対効果が最も高い企業だ。その点で、中国の企業はより有利な立場となるだろう」と語った。

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