”大赤字”だったバルセロナを甦らせた男 フェラン・ソリアーノ・元FCバルセロナ副会長に聞く

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いい例がサッカーのアルゼンチンのリーグだ。アルゼンチンではレベルの高い選手はすぐに欧州に移籍してしまい、技術的な水準が高い選手は地元リーグには残っていない。しかし、非常に人気が高くファンは熱心に応援している。都市同士のライバル関係など、地域的な対抗意識からもとても盛り上がっている。レベルの高いリーグも見るが、地元のチームも熱狂的に応援する。地元のファンに愛着を持ってもらえるかが重要だ。Jリーグもそこがポイントだろう。

――FCバルセロナでの経験はスパンエアの経営に役立っているか。

スパンエアは、就任当時のFCバルセロナより厳しい状況だ。FCバルセロナの運営を短期間で一気に変化させた経験が生きている。FCバルセロナで、選手や監督、スタッフなどいろんな職種の人たちと一緒仕事をした経験も生きている。

圧倒的に違う点を言えば、世間の注目度だ。サッカーチームの運営に対する注目度は、ほかの会社経営とは比較にならない。プレッシャーも大きく、何から何まで人目にさらされる。金魚鉢の中で経営しているようなもの。そこは航空会社とは違う。

航空業界が興味深いのは、複雑極まりないビジネスの仕組みだ。関係者が多岐にわたり、航空会社はますます利益を生みにくくなっている。航空ビジネスは需給変動に順応するのが難しい。需要は変動するがコストは固定化している。10年以上も前から航空市場は運賃の低価格化、という変化をしていたが、世界の多くの航空会社はこの低価格化に対応したコストダウンができていない。どこでも同じことだが効率のよい機体の導入、労賃の引き下げが経営改善のポイントだ。これができないと生き残れない。

スパンエアでは経営陣を一新し、あらゆる仕組みの効率化に取り組んでいる。組合と交渉を重ね、大幅に賃金をカットした。代わりに会社の株式を従業員に配った。頑張れば、頑張っただけリターンがある仕組みに変えた。こうした取り組みで大幅なコストダウンを実現している。

Ferran Soriano
1967年スペイン・バルセロナ生まれ。起業家、経営コンサルタントとして通信、エンターテインメント産業など各業界に携わり、2003年から08年までFCバルセロナ副会長。現在、スペインのスパンエア会長。著書に『ゴールは偶然の産物ではない~FCバルセロナ流世界最強マネジメント~』。

(撮影:尾形文繁)

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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