【鎌田浩毅氏・講演】一生モノの勉強法(後編)

アカデミーヒルズ「『一生モノの勉強法』実践講座」より
講師:鎌田浩毅

中編からの続き)

●東京は効率主義だからこそ、バブルの崩壊まで突き進んでしまった

 私は今、京都に暮らしています。京都から見ると東京というか、日本というか、世界のおかしいところがたくさん見えます。それは何かというと、皆さん忙しすぎるということです。毎日の仕事やいろいろなお付き合いに追われていますね。皆さん、手帳を真っ黒にしないと不安でしょう? それはある意味で不安症候群だと思います。もちろん忙しいということは、いろいろな仕事で声がかかったり、友達から電話が来たり、とてもうれしいことですね。けれど、その忙しさにかまけていると自分を見失うのです。

 いちばん大事なことは、本当にこれは自分がすべき仕事だったのか、本当に行くべきレクリエーションだったのか、ただ手帳が白いのが恐いからなのか、もう一回ちゃんと自分を振り返ってみることです。そうしないと、とにかく忙しくしないと不安になってしまい、そのまま仕事と人生の質が低下するのです。
 私の同僚や文筆業をやっている知り合いなど、皆そうですね。そして、彼らはすべて東京に住んでいるのです。たとえば本を出して6万部ぐらい売れると、依頼がたくさん来ます。次の本を執筆する話や、講演の依頼、雑誌の取材などなど。もし全部引き受けていたら、あっという間に自分の時間がなくなってパンクしてしまうでしょう。パンクするだけならいいですが、それだけではなく自分の受けた仕事の質がどんどん低下するのですよ。

 私は今どうしているかと言うと、本当にこの仕事は自分にしかできないものか否かを考えて、仕事を受けるかお断りするのかを決めています。ご依頼いただけるのはたいへんありがたいのですが、全部受けていたら、私は頭がパンクしてご期待に応えられなくなります。だから自分でちゃんと抑えます。「申し訳ないけれども、3年待っていただけますか」と丁寧なメールを返します。
 これは、東京と京都の距離だからいいのです。編集者の方が本の依頼で来るときも、京都までの新幹線代を使って、ときには1泊して時間を1日か1日半ぐらい、丸々潰していらっしゃるわけですね。どうしても私に書かせたい、と思った方だけが来られるわけです。しかし東京にいたらスッと30分ぐらいで来るわけでしょう。そうすると、今の10倍ぐらい依頼が来ると思います。幸い京都にいるから、今の状況で済んでいるわけです。

 『一生モノ』の第2弾として、『京大・鎌田流 知的生産な生き方 ロールモデルを求めて』という本を書きました。一言で言うと「京都の良さ、京都の距離」ということです。結局、東京はすべて効率主義で、だからこそバブルの崩壊まで突き進んでしまったわけですね。これは東京だけではなくて、世界的な傾向です。皆、同じ速度で走らないと自分だけが取り残されると思っている。遅れること自体がトラウマになって、全員が走り出すわけですね。そうではないところから物事を考えないと、良いものは生まれないと思うのです。

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