ヤマハの次世代「3輪電動車」に商機はあるか 次世代モビリティの戦いに「楽しさ」で挑む

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実証実験でトリタウンの長所はハッキリした。しかし、問題点も見つかっている。それがコストだ。

「実証実験では採算がとれるのか、ビジネスになるのかも検証しました。わかったのは、運営の費用と釣り合わないということです。いかに運営の無人化を進めるかが大事。また、電動キックボードと価格で競いたくはありません」と米田氏。

メーターなどはなく、操作性はシンプルなものとなっている(筆者撮影)

トリタウンは、その特徴でもあるパラレログラムリンク機構があるゆえに、どうしても車体が大きくなる。その分、モーターも電池も大きなものが必要になって、高額になりがちだ。

ユーザーに向けて売り切りにするにしても、シェアリングにするにしても、車両価格の高さは不利になる。また、軽量で持ち運びできるほど小型なものも存在する電動キックボードとは生きる場所も異なる。

「日本マーケットだけでは商売になりません。楽しさが個性なので、その強みを生かせる場所を走らせたいですね。レジャーや観光向けがいいでしょう。ただ、人混みの中を6km/h以下で走るのは苦手なので、クローズドの公園のようなところがいいかもしれませんね」と米田氏。

シェアリングに、アクティビティに

日本では規制が厳しいため、電動キックボードでさえ公道を走らせることは難しい。日本の公道でトリタウンを走らせるならば、原付バイクと同じ扱いになるだろう。運転免許が必要になるし、ヘッドライトやウインカーといった装備も必要になる。正直、普及するようには思えない。

そうなると、公園内や商業敷地内がターゲットとなる。そうした場所で、スポーツ・アクティビティとして利用するか、ガイド付きツアーなどに利用するというアイデアがある。

さらに大きな商機を期待できるのが海外だ。自転車専用レーンが整備されている欧州では、シェアリングの乗り物としても利用できるだろう。スポーティさが理由で人気を集めるかもしれない。また、スポーツ・アクティビティとしてのニーズも、日本よりも大きいはずだ。

トリタウンは、まったく新しい乗り物だからこそ、どこでどう走らせるのかが重要となる。普及のハードルは、製品のデキよりも走らせる場所の提案にありそうだ。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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