自民党は決して一枚岩ではない 純化路線を突き進む安倍自民党

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安倍首相が執念を燃やす集団的自衛権の憲法解釈の変更について、与党内で議論が高まってきた。

山口代表をはじめ、公明党には依然、消極論が根強いが、自民党内からも反対論や慎重論が噴出し始めた。村上誠一郎元特命担当相は「解釈変更ではなく、堂々と憲法改正を」と主張し、大島理森前副総裁も「閣議決定先行でいいのか」と慎重姿勢を示す。

村上氏は無派閥、大島氏は大島派の領袖だが、ともに三木元首相が率いた三木派の流れを汲む。

一方、岸田派の溝手参議院議員会長も「党内で慎重な議論が必要」と説く。党内の派閥では、大平元首相や宮沢元首相らの宏池会を源流とする岸田派も、反対論や慎重論が多いと見られている。

だが、トップの岸田外相を筆頭に小野寺防衛相、林農水相、根本復興相らは、安倍内閣の閣僚ということもあり、政権を支える姿勢を示して沈黙を守る。

自民党の派閥は現在、町村派(92)、額賀派(51)、岸田派(41)、麻生派(34)、二階派(31)、石原派(13)、大島派(13)という勢力地図だが(括弧内は国会議員数)、党所属国会議員は衆参で 409人だから、いまは無派閥(134)が最大勢力だ。自民党は長らく「佐藤・田中・竹下(現額賀派)」「池田・大平・宮沢(現岸田派・麻生派)」「岸・福田・安倍(現町村派)」「河野・中曽根・渡辺(現二階派)」「石橋・三木・河本(現大島派)」の5大派閥の連合体というのが実態だった。

加藤元幹事長は昔、自民党の本質を「反共・天皇制擁護・自由主義経済・親米を共通項とする人たちが集まった国民政党」と解説していたが、路線や政策を異にする人たちが同居するごった煮政党で、曖昧さや幅の広さを内包しながら、統治能力と政権運営力を武器に、長期政権を続けた。

ところが、政権奪還を果たした安倍首相は独自路線を決め打ちして独走する。純化政党の一面が目立っているが、それが現在の自民党の裸の姿なのか。だとすれば、いつ、どんな事情で変貌を遂げたのか。この先、政権政党として何を目指そうとしているのか。次回から「自民党の謎」について考察する。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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