内部留保多い日本企業はコロナ恐慌に耐えるか 手元流動性あっても油断大敵、カギは現預金だ

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さて、問題は内部留保の使われ方だが、貸借対照表上の統計では、内部留保は大きく分けて「有形固定資産」「投資有価証券」そして「現預金」に分けられる。これらの2006年度から2016年度の推移を見ると、次のようになる(財務省年次別法人企業統計)。

投資有価証券(株式や債券など)……179兆円→304兆円。125兆億円増(+69.7%)
現預金(預金などのキャッシュ)……147兆円→211兆円、64兆円増(+43.4%)
有形固定資産(設備投資)……464兆円→455兆円、-9兆円(-2.0%)

ちなみに、同じ10年間で内部留保のほとんどを占めている「利益剰余金」は252兆円から406兆円と、153兆円増えている。プラス61.0%の伸びだ。この10年間の企業の「負債及び純資産合計」は1390兆円から1647兆円と、257兆円増えており、伸び率+18.5%から考えても、内部留保の伸びは顕著だ。

要するに、企業は内部留保の格好で資産を貯めているのだが、その蓄えた資金を設備投資に回したりせずに、主として国内外の株式や債券に投資していると考えていい。また、現預金も総額で211兆円もため込んでいる。

ただ、言い換えれば内部留保とはいっても比較的自由に使える資金は、現預金の211兆円しかないとも言える。

今回の新型コロナウイルスによる経営危機で、従業員への支払いや固定費の支払いなどで多額の資金が必要になるわけだが、それで賄えるかどうかだ。

コロナで生き残れる企業と生き残れない企業?

そこで、注目されるのが新型コロナウイルスによる経営危機で、日本企業は生き残れるかどうかだ。今回のパンデミックは、世界中の企業が破綻の危機を迎える可能性があることを示している。

企業が破綻する最も多い状況は、手持ちの資金が枯渇して破綻するケース。リーマンショック時のリーマンブラザーズのように、潤沢な資産を持ちながら、目の前の決済に必要な資金が確保できずに経営破綻するケースだ。

そこで注目されるのが、「ネットキャッシュ」という概念だ。手持ち資金が豊富な企業の財務体質は健全であり、パンデミックのような状況でも強いと考えられる。ネットキャッシュというのは「現預金と短期保有の有価証券の合計額から、有利子負債と前受け金を差し引いた」金額のこと。

例えば、東洋経済オンライン編集部は、年に2回、ネットキャッシュに関わるランキングを公開している。そのベスト10を見ると、次のようになっている。

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