迷走する農業改革、厚い規制の「岩盤」 特区指定も農協保護など「岩盤」

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4月4日、安倍晋三政権の成長戦略のシンボルである「農業改革」が迷走している。都内で昨年3月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 4日 ロイター] -安倍晋三政権の成長戦略のシンボルである「農業改革」が迷走している。特区法も成立し、強い農業を目指して大規模化や企業参入を推進しようとしているが、他の規制改革と同様に厚い規制の「岩盤」にぶち当たっている。

中でも農協と小規模農家を保護する圧力は、簡単には突破できそうもない。改革が一筋縄では進まない現実がそこにある。

コメどころ新潟市、特区で芋ジェラートを

国家戦略特区に指定されたコメどころ、新潟市。今回、特区法を活用して強化するのは、ブランド力を持つコメではない。

より大規模化を図るため農地集積に関する要件緩和の要望が特区法で認められなかったからだ。そこで「6次産業化として野菜の加工販売に取り組む」(新潟市産業政策課)計画が立てられている。

まず、広大な葉タバコの耕作放棄地に、食品企業の参入を促しつつ、生産から加工まで農家と共同で手がける大規模な工場を造る

そこで栽培を始めた特産品サツマイモ「芋ジェンヌ」のジェラートへの加工、洋ナシ「ルルクチェ」のジュースやスイーツへの加工を行う。

今の規制の枠組みでは、企業による農業への参入には、 農家や農協と距離の近い地元の農業委員会の許可が必要。

そこで安倍政権は戦略特区法で許可権限を市に移した。「きちんとルール化された許可の基準ができ、企業にとってはやりやすくなるはずだ」と新潟市は述べ、「具体的に動き始めている6次化事業は、これで弾みが付きそうだ」と期待を寄せる。

特区法では、農業生産法人への企業参入の要件も緩和された。企業の中に農作業に従事する役員が1人いれば、参入できるようになった。

また、農業参入のための企業向け銀行借り入れに、信用保証制度が使えるようにもなった。

その結果、食品加工企業や商社、流通などの参入をにらみ、地域金融機関が続々と農業融資に乗り出している。

関東のある大手地銀では「個別農家の経営全体を支援している農協のようにはいかないが、農業生産法人向けの6次化ファンドを立ち上げ、参入していく」と意気込みを語る。

ただ、厳しい現実も立ちはだかる。それは採算だ。「6次産業化」と銘打って農産品を加工しても、果たして消費者に受け入れてもらえるのか──。採算性の高い事業に発展させるのは容易ではないとの指摘も出ている。

実際、農業生産法人の関係者は「ジュースやスイーツは世界のブランド企業もすでに手がけている事業。味や価格で勝負は難しい。全国で6次化が拡大すれば、供給ばかり増えて価格は下がり、自分のところの商品が売れるわけではない」としている。

「むしろ重要なのは、どこの誰に買ってもらう商品を作るのかという販売戦略であり、そこから始めるべき」──。とのアドバイスは、かなりの重みを持っているように見える。

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