日本経済が「コロナ危機」にこれほど弱い根因 スペイン、イタリアと共通する「脆弱性」とは

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その「類似点」こそ、産業構造の歪みです。何度も指摘しているとおり、日本は小さい企業が圧倒的に多いという歪みを抱えています。

イギリスのデータを見ると、労働者が大企業と小規模事業者に集中しており、中堅企業が少ないことがわかります。この産業構造の歪みが、生産性が低い原因となっています。

長期になればなるほど「財政出動」が必要になる

コロナウイルスとの戦いが短期戦ならば、各国の財政は問題にならないかもしれません。しかし長期戦になれば、どこまで企業と雇用を守ることができるかは、最終的にはどこまで財政出動ができるかにかかっています。

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余裕がない小規模事業者が多ければ多いほど、支援を求める企業と労働者が増えるため、その国の負担は重くなります。反面、小規模事業者が多い国ほど生産性が低くなり、財政は弱くなります。つまり、国の負担が重い国ほど、それに対応するお金が少なくなるのです。

そして日本は小規模事業者が極めて多く、財政が脆弱な国の代表格です。コロナ問題が長期化すれば、どこまで小規模事業者を守るのか、苦渋の決断を下さなければならない日が近づくのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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