アリババ「アマゾンすら凌ぐ」巨大市場の正体 手数料無料の大胆戦略で探り当てた鉱脈

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「手数料無料」の施策のインパクトは非常に大きく、アリババドットコムに登録する企業はどんどん増えていきました。2001年末には、登録企業の数が100万社を超えるほどにまで膨れ上がります。ただし、手数料が無料なので、当然、ユーザーが増えてもアリババドットコムの収益は上がりません。むしろ、サーバーの維持にかかる経費などが増大してしまいます。

こうして、マー氏がアリババ設立時に用意していた資金はあっという間に底をつき、投資家が出資してくれた資金によってなんとか運営する状態がしばらく続いたのです。

そこで、マー氏が次に導入したのが、有料会員制度です。無料会員を残しつつ、Eコマースでマーケティングの支援などが受けられる有料会員を設けることで、収益化を図ったのです。有料といっても、ほかのEコマースより割安な料金だったため、無料会員から有料会員に転じるユーザーは増えていきました。この時点で、ようやくアリババの収益モデルが確立したのです。

アリババが企業として大きく飛躍したのは、2003年7月にスタートした「タオバオ(淘宝網)」です。これは「CtoC」(=個人間取引)のEコマースです。タオバオがスタートしたときも、すでに競合は存在していました。それが、アメリカの「イーベイ(eBay)」です。イーベイとは、アマゾンと同時期の1995年9月に創業した企業で、当時、CtoCのマーケットプレイス型のEコマース企業としては世界最大でした。イーベイが2002年に中国に進出し、市場を独占していたのです。

では、またもや後発になってしまったアリババは、いったいどんな手を打ったのか? アリババドットコムと同じく、またもやユーザーの手数料を無料にしてしまいました。無料にするための原資は、それまでにアリババドットコムで得た利益でした。この手数料無料は大当たりし、イーベイのユーザーを短期間で奪うことになったのです。

ユーザーの拡大に大きな影響を与えた「アリペイ」導入

さらにアリババは、銀行と協力して開発した、オンライン上の決済サービス「アリペイ(支付宝)」を導入します。これは、タオバオで取引が行われる際、購入側の資金をいったんアリペイが預かり、取引が成立すれば、出品側にアリペイから代金が支払われるという仕組みです。もし、購入した商品にトラブルがあった場合は、アリペイから購入側に商品代金が返金されます。

中国では、銀行に口座を持っている人の数はそれほど多くなく、クレジットカードを持っている人も限られていたため、ネットショッピングの際に、簡単かつ安全に利用できるアリペイは爆発的に広がりました。マー氏は、このアリペイの利用料もなんと無料にしてしまうのです。

その結果、CtoCのEコマースでトップシェアを握っていたイーベイは、ユーザー数をどんどん減らしていき、2006年12月、ついに中国のサイトの閉鎖に追い込まれます。一方、タオバオは順調に拡大し、2010年7月末には登録ユーザー数が2億人を超え、Eコマースとしては世界で最もユーザー数の多いサービスとなりました。

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