短観先行き悪化は、日銀の想定内 雇用ひっ迫で物価上昇の見方

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4月1日、公表された短観では、消費増税をにらんで先行きの企業の景況感が軒並み悪化したが、日銀では想定内の動きであり、景気・物価シナリオに大きく影響を与えるものではない、とみている可能性が大きい。写真は日銀ビル。昨年3月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 1日 ロイター] -1日に公表された短観では、消費増税をにらんで先行きの企業の景況感が軒並み悪化したが、日銀では想定内の動きであり、景気・物価シナリオに大きく影響を与えるものではない、とみている可能性が大きい。雇用・設備投資関連の企業マインドは底堅さが確認できたとの声も聞かれる。

現時点では労働市場のひっ迫などが、物価を押し上げていくとの見方を維持できるとみている。

もっとも黒田東彦総裁は2%の物価目標達成が危うくなれば、追加緩和を辞さない姿勢を示しており、反動減一巡後の景気回復ペースが政策判断の焦点となる。

3月短観では、指標となる大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス17と5四半期連続で改善し、2007年12月(プラス19)以来の高い水準になった。

一方、先行きはプラス8に悪化する見通しが示された。足元からの悪化幅は9ポイントとロイターが集計した民間予想の5ポイントから下振れた。

しかし、日銀内では、先行きの落ち込みは想定の範囲内との見方が多い。足元の景況感が非製造業でバブル期以来の高水準にあり、そこからDIが低下しても、企業の雇用や設備投資に関連した見方が引き続き堅調さを示しているとみているようだ。

また、企業のやや長めの景況感を反映する生産・営業用設備判断(過剰─不足)が先行きマイナス1(全規模全産業ベース)となり、設備が「過剰」と感じる企業よりも「不足」とみている企業が多いことにも注目している。

さらに物価上昇の重要なけん引役である雇用人員判断(過剰─不足)も、足元でマイナス12(全規模全産業)と人手不足感が一段と強まり、先行きもマイナス11と引き続き、タイトな雇用環境が続く見通しにある。このため設備も含めて物価上昇圧力が強まりやすい状況にあるとみているようだ。

黒田総裁が昨年8月の有識者懇談会で、消費増税後の景気下振れに対して追加緩和の心構えがあると解釈可能な発言をしており、市場では追加緩和観測が根強い。

ただ、日銀は今年に入り、雇用情勢の改善に伴う物価上昇シナリオの実現にさらに自信を深めているもようだ。

日銀では年央までの消費者物価上昇率は1%台前半で推移し、その後は再び上昇基調に向かうとみている。

そのシナリオ通りに行くかどうかは、消費増税後の個人や企業のコンフィデンスに大きく左右されると日銀は見ており、きょう1日以降の消費動向や耐久消費財などの価格の推移などを丹念にフォローしていく方針。

そうして得られたデータなども含め、シナリオ実現のカギを握る4─6月の反動減の深さと、その後の7─9月に向けた景気回復ペースについて、慎重に点検を続けていく考えとみられる。

(竹本能文、伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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