人工呼吸器、患者急増でも増産阻む「高い壁」 高い輸入依存、部品調達や承認審査に課題

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日本光電はICUで使用可能な人工呼吸器をアメリカで自社開発・生産している。それは欧米や新興国における販売用であり、日本では薬事承認を取得しておらず販売できない。また、「アメリカで増産しようとしても、組み立てに必要な人材や部材が確保できるかは不透明な状況」(同社経営企画部)と説明する。

人工呼吸器の生産に乗り出すうえで直面するのがこうした部品調達の問題だ。医療機器は生産台数が多くなく、部品製造の担い手は中小企業であることが多い。そのため、急な増産に部品製造が追いつかない。この分野に参入していなかったメーカーにとっては部品を確保できるかどうかがカギになっている。

部品調達に立ち上がったベンチャー企業

人工呼吸器を取り巻く、そうした事情に目をつけたベンチャー企業がある。金属加工部品の受発注プラットフォームを運営するキャディ(東京)だ。中小の町工場と提携して作り上げたデータベースを活用し、顧客が必要とする部品を短時間で手配することを強みにしている。欧米の医療現場での混乱を知った同社の加藤勇志郎CEOが医療分野での貢献ができないかと考え、4月初めに動き始めた。

具体的には国内の医療機器メーカーに声をかけ、部品の調達を請け負う。通常は追加料金がかかる「特急納期」でも、追加料金を取らないなどの対応を取っている。メーカー側も、コロナウイルスの影響で活動しづらい調達の手間が省け、すばやく部品が調達できることからすでに複数の引き合いがあるという。

加藤CEOは「今こそ日本のモノづくりの強さで世界の危機を乗り越えるとき。製造業のプラットフォームとして、今やらなくて、いつやるんだ」と話す。

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