政治家よ、あなた方はどこまで他人事なのか 東京都医師会長「まず医療現場を見に来い!」

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新規の感染者数を抑えるためには、時に政府の強権発動も必要だと尾崎会長は考えている。新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言もそのひとつだ。宣言されれば若者も銀座のクラブ通いの中高年も自粛せざるをえないだろう。だが、その宣言も、まだない。こうなったら、医療人である自分が呼びかけるしかない。そういう思いがFacebookへの投稿につながった。

医療体制の備えを進めることも東京都医師会長に課せられた大切な仕事のひとつだ。感染者が増えていくにつれて、すでに病床に余裕がなくなってきている。感染症の指定病院が重篤・重症の患者の治療に専念できるように、公立・一般病院にも病床を空けてもらう必要がある。

空き病床の確保は難航

だが、それは簡単なことではなかった。だれしも新型コロナウイルス感染者を受け入れることには難色を示す。感染すれば重症化するリスクを抱えた他科の患者がいるし、医療従事者が感染すれば、病院全体が機能不全に陥る。空き病床を確保することは難航している。

東京都医師会の尾崎治夫会長

さらに問題なのは、無症状や軽症の感染者の扱いだ。無症状でも感染が確認されれば、感染症法に基づいて入院隔離しなければならない。こういった無症状の感染者で病床がいっぱいになれば、重症や重篤な感染者を入院させることができなくなり、ひいては治療に支障をきたすことにつながる。

東京都医師会は都と協力して、無症状の感染者を病院ではない宿泊施設へ移すためのスキームを検討している。例えばオリンピックの選手村やホテルを借り上げて、そこで「隔離」する。無症状でも病態が急変するため、地域の保健所に詰めた医師会の会員である医師が、オンラインで異常がないかをチェックする。容体が悪化すれば、防護服を着て往診して、転院させるなど症状を見極める。こんなプランだ。

尾崎会長が、いま最も心を痛めているのは、まだ感染爆発していない現在でも、医療現場では試行錯誤の闘いが始まっていることだ。救急医療の現場には、患者が日常的に搬送されてくる。例えば心不全の患者が運ばれてきたとしよう。

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