喫煙者のコロナ感染がどうも楽観視できない訳 米の研究論文で重症化リスク指摘、WHOも警鐘

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1つは中国の『チャイニーズ・メディカル・ジャーナル』という医学雑誌に2月28日に掲載された論文です。ここでは多くの要因を考慮した解析により、喫煙歴が最大の重症化要因であり、喫煙していると約14倍重症になりやすいと述べられています。

もう1つはアメリカの『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』という最も権威のある医学雑誌に同じく2月28日に掲載された論文です。こちらには、中国本土の患者1099人の分析が報告されたのですが、非喫煙者の重症率は14%なのに対して、喫煙経験者は24%が重症となっていました。

これに掲載された表から私が計算してみたところ、非喫煙者に対して、喫煙経験者は約1.7倍重症化しやすく、約3倍、危篤状態(集中治療室入室、人工呼吸器装着、死亡のいずれか)になりやすいということが読み取れました。

また、報道ベースの情報ですが、ロイターは3月25日配信記事で、欧州連合(EU)の専門機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が、喫煙者、および以前に喫煙していた人が新型コロナウイルスに感染すると症状が重くなる恐れがあるとする研究結果を報告したと報じました(「新型コロナ、喫煙者に重症化リスク=欧州疾病センター」)。

喫煙を長く続けると肺の機能は低下しやすい

これらの事実は呼吸器内科医である私にとっては、納得の内容です。喫煙を長い間続けていると俗に「タバコ肺」と呼ばれる慢性閉塞性肺疾患 (COPD)になることが多いのです。そのなかでも典型的なのが肺気腫です。

当然、肺の機能は落ちていきます。私もたくさんのタバコ肺の患者さんを診療していますが、つねに酸素を吸わなければならなくなった患者さんは、本当につらそうです。

タバコ肺が進行すると、日常のちょっとした動作でもすぐに息が切れるようになり、だんだんと外出することもできなくなっていきます。水に溺れたような息苦しさがずーっと続くと考えていただければよいでしょう。息切れを改善する吸入薬はありますが、病気自体の進行を止めるには禁煙するしかありません。

タバコによって肺の余力がなくなった高齢者が、新型コロナウイルスに感染すると、あっという間に呼吸が苦しくなって、人工呼吸器を使用するほどの呼吸困難となる可能性が高いと考えられるのです。

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