「オンラインで授業」先生たちの試行錯誤の日々 突然の休校措置が切り拓く未来の教育とは

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普段から教員同士のコミュニケーションにはハングアウトを使っているが、過労働にならないよう勤務時間外には使用していない。しかし今回は緊急事態。帰宅していた教員たちがオンラインでつながり、夜のうちに課題検討が進んだ。

その中で新しい試みとして出てきたアイデアがZoomの利用だった。「最初は児童の顔を見て、健康観察ができれば、というぐらいの気持ち」(小野田校長)で、まずは9時からの朝の会と11時からの終わりの会をZoomで実施。午前中ずっとZoomを使うのではなく、各自で自宅学習に取り組むことを基本とした。

児童の姿がない1年生の教室。Zoomを使った終わりの会で担任の先生が「給食クイズ」を出し、タブレットの画面越しに子どもたちを楽しませていた(筆者撮影)

一方、教員それぞれが試行錯誤を重ねた結果、次第にZoomを使ってオンライン授業ができるようになっていく。子どもたちも操作に慣れ、挙手機能やチャットを使いこなせるようになった。

体育の授業で体操したり、生活科の授業で学校内の植物を撮影して観察したり。子どもたちにとっては画面越しであっても、いつもの学校、いつもの先生、いつもの友達と出会えることが何よりうれしかったのではないだろうか。

公立でも取り入れられる仕組みづくり

家庭でWi-Fi環境が整っていないなど、Zoomへの接続が困難な場合もある。そのため朝の会や終わりの会も参加は強制ではなく、普段どおり連絡事項はGoogle Classroomで共有。オンライン授業は録画して専用サイトから閲覧できるようにするなど、フォロー体制も整えられた。

Zoomを使った国語の授業。先生からの問いかけに、チャット機能を使い、テキストを打ち込んで回答する児童もいる(筆者撮影)

またZoomの利用について保護者からはオンラインでアンケートを回収。「朝の会の開始に合わせて規則正しい生活ができた」や、「最初は落ち込んでいた子どもも、友達の顔を見ると表情が明るくなった」など好意的な意見が多く聞かれた。

さとえ学園小学校の取り組みについて、「校内に水族館やプラネタリウムまである私立小だからできるんでしょう?」、そう揶揄する人もいるかもしれない。しかし意外にもICT化の方針は「公立校のモデルになるような取り組み」。そう語るのは、ICT・AL(アクティブラーニング)教育担当の山中昭岳先生だ。

山中先生は約20年前、和歌山県の旧熊野川町(現在の新宮市)で教員となり、山間部の小さい公立小でありながら当時、パソコン教室に1人1台を実現するなどIT化の指揮を執っていた。この経験から、ICTツールが子どもたちの可能性を大きく広げることを実感。そしてそのメリットは一部の子どものものではなく、すべての子どもが平等に享受できるものでなければ社会は変わらない、という信念を持ったという。

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