ビッグデータをどうビジュアル化すべきか 企業価値を上げる映像コンテンツ3つのポイント(下)

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広がるデータのビジュアライゼーション

次は、同じブリティッシュ・エアウェイズでも、一味、異なった方法でビッグデータを活用し、ビジュアル化したこちらのキャンペーン「#lookup in Piccadilly Circus」をご覧いただきたい。ちょっと毛色が違うが、データのビジュアライゼーションおよび試みを、YouTubeなどの映像コンテンツプラットフォームにおいて話題を生んでいる事例としてご紹介したいと思う。

●#lookup in Piccadilly Circus

ロンドン一の繁華街、ピカデリー・サーカスに登場したデジタル屋外広告。その上空を、ロンドン着陸間近のブリティッシュ・エアウェイズの機体が通過する。すると少年がその機体を指差し、次のようなメッセージが表示される。「見て、あれはバルセロナ発のBA475便だよ」

驚くべきことに、このデジタル広告では、今、実際に上空を飛んでいる機体の情報を反映しているのである。種明かしをすると、これはADSBと呼ばれるアンテナを活用し、200キロメートル以内を飛んでいる飛行機の就航データを読み込んでいるそうだ。そこで、読み込んだデータを活用し、フライトナンバーに加えフライトの出発地もリアルタイムに広告に反映させることに成功したのだ。また、この広告には各ルートに対応した、カスタマイズメッセージも表示されるような仕掛けも設置されているという。

この屋外広告は、6週間以上にわたってピカデリー・サーカスと併せ、ヒースロー空港へとつながるM4高速道路の途中にも掲示された。そして広告のローンチから3週間も経たないうちに、このキャンペーン映像はYouTubeで100万プレビューを突破、さらにはTwitter上では1万7000回以上も話題になったという。さらに118カ国のニュースで報道され、世界規模で4500万インプレッションを記録するまでの話題となった。

このキャンペーンの目的は、ブリティッシュ・エアウェイズが誇る幅広いフライト就航ネットワークや新規就航ルート、そして各フライトの就航頻度について知名度を上げることであったという。最初、この屋外広告を見た人は、はたして本当のことを教えてくれているのか疑いを持ったかもしれない。しかし、次々と表示されるフライト情報を見ているうちに、あらゆる地域から飛んでくるブリティッシュ・エアウェイズの機体に自分も乗って旅したくなるのではないだろうか。さらには、この広告を見たときに多くの人が最初に抱いた感想が、「すごい!」であったと思われる。このケーススタディは、ビッグデータとテクノロジーの力によって、消費者にエモーショナルな体験をさせることが可能であることを示している。ビッグデータとテクノロジーがもたらした「驚き」と「感動」が、消費者へのブランド認知度上昇につながった例と言えるだろう。そして、この屋外広告がどのような仕組みで機能しているのかを知るために、オンラインで検索した人も多いようだ。このようにして、PRにおいても順調に結果を達成していったのである。

このキャンペーンでは特設サイト「#lookup」も開設され、ヨーロッパに限らず世界中に向けて就航しているブリティッシュ・エアウェイズ便の運賃を簡単にオンライン検索することができるように整備された。これは、実際に上空に飛んでいる機体を見上げるだけでなく、「look up」という英単語の別の意味である「検索する」という意味にもかけたキャンペーンであるように思われる。

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