マツダ社長「クルマの売り方を180度変える」 大苦戦のアメリカで、どう巻き返しを図るか

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──マツダはBMWやアウディのような欧州の高級車メーカーを目指している、と思い込んでいる消費者もいるようです。

高級ブランドになろうとしているのではなく、適正な価格でということ。すべてのお客様が安全でなければならないので、先進安全装備を今後さらに拡充させていく。コネクテッドも同様だ。そうした最新技術の導入に必要なコストもきちんと考慮したうえで、商品の本来の価値に見合った価格で販売したい。お客様にその価格を受け入れてもらうためにも、商品価値を理解していただけるような丁寧な売り方が非常に重要になってくる。

丸本 明(まるもと・あきら)/1957年広島県生まれ。慶応大学工学部卒業。1980年マツダ入社。開発・設計部門が長く、1999年に41歳で取締役に就任。経営企画や米州事業などを担当し、2018年6月から社長兼CEO。座右の銘は「飽くなき挑戦」(撮影:梅谷秀司)

また、お客様のニーズは多様化していて、「もっと高くてもいいから、マツダの最先端の車が欲しい」という方もいらっしゃるので、そうした声にも応えていきたい。(現行大型車種のフルモデルチェンジに合わせて)プラグインハイブリッド車(PHV)や上級エンジン搭載モデルなども用意し、価格レンジを上に広げていく。

トヨタのような幅広い車種展開は無理

──その新世代大型車種の投入開始時期は当初2021年の計画でしたが、2022年度中へと延期しました。

搭載する電動化技術の市場性や商品展開、商品力を再検証し、計画を見直すことにした。例えばPHVならバッテリーをどのくらい積み、どの程度の航続距離を目指すか。総合的な商品力を考えると、従来の計画のまま進めるのはまずいということになった。競争力のある車を送り出すための判断だ。

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──車のラインナップ自体が限られるので、どの車種も失敗は許されない。そこがスモールプレーヤーの難しさですね。

そのとおりだ。発売時には当然いろいろな分析をして、エンジンやグレードの構成比率を想定する。しかし、実際の販売は発売時期や競合環境、経済状況に左右されるし、顧客の嗜好、価値観自体が多様化してきている。これを商品に迅速に反映させるのは簡単なことではないが、小さな会社だからこそできてしかるべきだと社員には言い聞かせている。

当社はスモールプレーヤーだが、「走る歓(よろこ)び」を楽しんでもらえるような車を提供し続けることで、企業としての独自性や存在意義を示したい。エンジニアが夢やこだわりを貫くことは大事だが、顧客にとって価値があることが大前提だ。「顧客の期待を超えること」をつねに創造するブランドでありたい。トヨタのような幅広い車種の展開はマツダには無理。その代わりに、自分たちが得意とする領域をより深めていく。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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