日本の国際競争力は17位、これって順当?

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日本の国際競争力は17位、これって順当?

民主党参議院議員・藤末健三

IMDの国際競争力ランキング

 5月11日、スイスの国際経営開発研究所(IMD)が、毎年恒例の世界競争力ランキングの2006年版を発表しました。このランキングでは、各国の統計や独自のアンケートをもとに、世界61カ国・地域の「経済動向」、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」、「インフラ整備状況」の4分野を312項目で数値化して採点しています。

 わが国の今年の順位は17位。昨年の21位からランクを4つ上げました。

 ただ、このランキングって本当に意味があるの?と思われる方も多いと思います。私の個人的見解としては、IMDの競争力ランキングは、”基礎的な競争力”ではなく、”一時的な調子”をみるランキング、だと思っています。つまり、学校で言う中間テストのようなもので、実力テストではないといった感じです。実際、これだけ大きな貿易赤字と財政赤字を抱えるアメリカの競争力が、総合ランクで1位であることに納得できる人はあまりいないでしょう。

 例えば、1989−1992年には1位にランクされていたわが国が、2002年には30位まで転落(マレーシアやハンガリーより下)したことをみても、長期的な視野に立ったランキングとは考えられません。(途中で評価基準が変わったりしていますので、しょうがないと言えばしょうがないですが)。

 評価の方法もアンケートと統計がメインであり、やはりその時々の雰囲気がそのまま結果に出るのではないでしょうか?ちなみに2006年ランクにおいて、中国は19位(昨年は31位)、インドは29位(同39位)となっています。


日本が香港、シンガポールに学ぶこと 

 順位を見ると、1位は6年連続で米国。そして、2位香港、3位シンガポールが続きます。アメリカの1位は、想定の範囲内ですが、「香港とシンガポールがなぜ?」という感じはありますね。でも、私は、この二国は高く評価しています。個人的には、世界2位、3位にはランキングしませんが、わが国が見習うべきところはたくさんあります。

 とりわけ興味を引くのが「大学教育」です。この分野では、両国とも世界的に高い評価を得ています。英タイムズ紙の大学ランキング以外のランキングを見ても、香港とシンガポールの大学は、わが国と比べてほとんど遜色はありません。両国とも、人口がわが国の20分の1くらいの国であることを考えると、驚くべきことです。

 また、ビジネス環境に関しての評価も高く、「英語が使える国」であることが高く評価されているようです。この点はわが国も見習うべきポイントです。


 さらに細かく分野別の評価を見ると、わが国はいびつな国であることが分かります。例えば、特許付与件数、外貨・金準備高、中等教育普及率、寿命の長さは、なんと世界でトップ、研究開発費でも世界 2位という高い評価を得ています。

 ところが、起業、法人税率、大学の経済への貢献といった項目については最下位グループです。また、経営効率は23位、政府の効率性でも31位という評価を受けています。社会経済の効率性では、香港、シンガポール、台湾、マレーシア、インド、タイ、韓国、中国などアジアの国々に負けているということです。この事実に日本人は気付かないといけません。まだまだ、やるべきことが残っています。

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。
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